バレンタインが近いこともあり、巷ではチョコレートのフェアやイベントが増えてきましたが、それとは全然関係なく、先日、ビーン・トゥ・バーのチョコレートメーカーkiitosさんのセミナーに参加してきました。鹿児島県の鹿屋市に位置し、海に一番近い小学校と呼ばれていた鹿屋市立菅原小学校を再利用した「ユクサおおすみ海の学校」でビーン・トゥ・バーチョコレートの製造をしている、個人的に大好きなチョコレートメーカーです。原材料は、厳選したカカオ豆ときび砂糖だけ。桜島をモチーフにした三角形のチョコレートを見かけたことがある方も多いかもしれません。(九州中心かも?)
2012年に初めてオランダで開催されたCHOCOAというカカオとチョコレートのイベントに参加して、ビーン・トゥ・バーの面白さや奥深さを知って以来、チョコレートの世界やフレーバーの豊さ、そしてコーヒーに通づるストーリーや歴史の虜になりました。スペシャルティコーヒームーブメントのように、チョコレートも2000年台後半からアメリカを中心にビーン・トゥ・バーのムーブメントに火がつき、最近ではよく聞くようになりましたね。
実はコーヒーとカカオはよく似ています。生育環境は亜熱帯地域で(コーヒーベルトは赤道の南北25度、カカオベルトは赤道の南北20度だそう)、カカオは標高が低い場所で育ちますがシェードツリーが必要だったり、コーヒーの焙煎機でカカオを焙煎したりもします。(カカオは嫌気性発酵でパルプを取り除き、独特なフレーバーを生み出しているって知ってました?コーヒーで言うところのアナエロビックファーメンテーション) 多くの農家は、カカオの売却価格が低すぎるせいで(コーヒー同様に先物取引されている)貧困生活を送っていて、コーヒー2050年問題と呼ばれるコーヒーの生産量が地球温暖化の影響で減少してしまうという問題も、カカオでも同様に予測されています。
セミナーでは、カカオの精製からチョコレートの作り方、異なる産地の味の違いをテイスティングしてみることに加え、kiitosの母体であるLanka(障がいを持った方たちの就労支援を目指して活動している就労継続支援B型事業所 特定営利活動法人)の活動についてお話を聞きました。優れたプロダクトを作ることが、やりがいやモチベーションに繋がっていき、良い形で社会に還元されていく。素晴らしい活動にたくさんインスピレーションをいただきました。そして改めて、コーヒーとチョコレートの類似点や面白さや美味しさを再認識する時間となりました。日本にも素晴らしいビーン・トゥ・バーのチョコレートメーカーがたくさんあるので、ぜひご興味ある方は色々とチェックしてみてくださいね。
チョコ、食べたくなりましたね! それでは良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
香り高いアイデアの泉
突然ですが、皆さんに問題です。コーヒーとプログラミングの”共通言語”といえば、一体何でしょうか?
答えはそう、「Java (ジャワ島) 」です。インドネシアコーヒーの産地としてはもちろん、プログラミング言語としても有名なJavaですが、そもそもなぜこの2つの世界で同じ名が浸透しているのでしょうか。 The New York Timesのこちらの記事がその歴史を紐解きます。
遡ること1720年頃、当時オランダの統治下にあったインドネシアのジャワ島は、最も成功したコーヒープランテーションの開発地として世界中にその名を轟かせていました。米国でもジャワ島産コーヒーの品質が高く評価され、人々の間で「Java」の名がコーヒーそのものを表す愛称として浸透していったそうです。それから250年以上が経った1990年代後半、米国では「Oak (オーク)」というプログラミング言語が誕生しました。しかし商標権の都合から名称変更を余儀なくされ、開発メンバーの間で、革新的、かつ綴りが簡単で覚えやすい名前は何かと候補を挙げていたところ、満場一致で「Java」に決まったそうです。ちなみにその理由は「プログラマーはコーヒー (java) を大量に飲むから」なのだとか。こうして1995年の発表から今日までの約27年間、プログラミングの世界でJavaという“共通言語”が用いられているのです。
以前、ウェブカメラの開発にはコーヒーが関わっていたという記事もありましたが、もしかするとあらゆるアイディアの源泉は、どこかで味わい深いコーヒーの泉に繋がっているのかもしれませんね。
その他の気になるニュース
▷ 現在イタリアではエスプレッソ価格値上げの可能性を受け、国民から怒りの声があがっています。毎朝行きつけのバールを訪れる550万人もの人々は、エスプレッソが庶民の手の届きづらい存在になってしまうことに大きな危機感を抱いているようです。
▷ 英国発のライフスタイル誌Monocleがスイス・チューリッヒに初のコーヒーキオスクをオープン。世界の雑誌や生活必需品、そしておいしいコーヒーも取り揃えているそう。映像にはLa Marzoccoのエスプレッソマシンの姿も👀
▷ 米ピッツバーグ州立大学で、コーヒーの出がらしとカエデの葉をバッテリーにアップサイクルする研究が進行中。充電回数1万回以上、10年以上の使用に耐えうるバッテリーがコーヒーから生まれるかもしれません。
▷ スターバックスが中国大手フードデリバリー企業「美団 (Meituan)」との連携を発表。今後は美団のアプリ上でのオンラインオーダーができるうえ、スタバ店舗での試飲会や体験会の予約もできるそうです。
▷ 不思議な森に迷い込んだ疲れ気味の会社員サチが、思いがけない出会いを経てコーヒーと共に心安まる時間を過ごすスマホゲーム「不思議な森でコーヒーを」が配信開始。是非マナーモードオフ、音量大きめでプレイしてみてください。森と焚き火のBGM、最高です。
What We're Drinking
今週のコーヒー
ハレとケ珈琲(徳島)
日本三大秘境の一つ、徳島・祖谷渓のエントランスエリア、祖谷口山間部に佇む 元小学校の廃校をリノベーションした自家焙煎カフェ。 甘く、優しく、しっかりしたボディでありながらクリアでマイルドな ”冷めても美味しい深煎り珈琲”を大自然の中で日々焙煎しています。 拠点としては、本店の他に大自然の中で、川が真横にある”谷のサウナ”が楽しめる徳島・三好市「シモノロ・パーマネント」、 2021年には香川・三豊、有名な夕日スポット”父母ヶ浜”も近いエリアに珈琲の専門性に特化したスタンド、「森のスタンド」を、そして徳島市にはアーケード街の一角に、カヌレ工房のあるカジュアルなスタイルの「ハレとケ珈琲stand」をオープン。 加えて、本店にも2022年春に完成予定にてサウナが楽しめるようになります。 各拠点にていろんなシチュエーションで、いろんな楽しみ方で珈琲を堪能できます。
生産者:Israel Degafa(農園主)
農園:ゲレナ農園
生産地域:エチオピア シダモ県グジ地区 (地図)
品種:ゲシャ(ゲイシャ)
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:
(温度帯:高めの時) →フルーティなハイカカオのビターチョコ、アフターにフローラル
(温度帯:低めの時) →トップにフローラル、グレープ、レモンやジャスミン 甘みはキャラメル
編集長のコメント:
最近は飲む機会が減っていたかなり深煎り(個人的に)のコーヒーでした。まず初めに一番驚いたのは、浅煎りでは感じることのない相当面白い複雑な香り。スモーキーでペッパー、ファンネルや樹液のような強い芳香を感じます。これはもっと楽しみたいと、温かいうちにカップの中で入れて嗅いでみると、ムスクのように甘く暖かい、ゆったりとした官能的な香り。ようやく一口含むと、予想に反してすーっと入ってくるクリーンな液体。そしてすぐにキュッと感じたのはボタニカルハーブのような捉えようのないフレーバー。その後に、100%カカオを食べた時のようなビターでナチュラルな甘みがありました。じっくり熟した干し柿のようなニュアンスも。特に印象的だったのは、鼻に抜けながら口の中に広がるピートのような香り。まるでアイラ島のシングモルトウイスキー「ラフロイグ」を飲んでいるかのよう。癖強め、でも癖になりそうな中毒性高めの、新しい扉を開いてくれるコーヒーでした。ちなみに、お店ではネルドリップでデミタスなんかが飲めるらしく、これはちびちび飲んでみたいなぁ……。
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
プロフィール:
イタリア出身で現在はニュージーランドを拠点とするマルチディシプリナリー・アーティスト。各地方ならではの素材を生かし、それぞれの地域の個性の表現や記録を試みる。直近ではセラミックを題材にした作品の制作に取り組んでいる。
最新の掲載記事:
Standart Japan 第16号 カバーストーリー
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『翻訳とユーモア 遠くのボート』小堀 由岐
イラストレーター・翻訳者、近年はデザイン領域でも活躍する小堀由岐さんが、翻訳・イラスト・編集・発行すべてを担当するブックレットシリーズ。少し前に広島の本屋さんREADAN DEATで購入しました。
2019年創刊した『遠くのボート』は、洋雑誌に掲載されたフィクションやエッセイ、書評や当時の広告などをまとめた翻訳選集です。翻訳元となる記事は『The New Yorker』や『The Atlantic』、イギリスの風刺漫画雑誌『PUNCH』などから厳選され、時代はなんと1920年から1960年代限定。翻訳と共に映画のワンシーンや写真作品から着想を得た小堀さんのイラストレーションも収録されており、こだわりとユーモア溢れる小粋な一冊となっています。思わずニヤニヤしながら読み進めていく中で、ふと50年以上前の人々もこうやってニヤつきながら元記事を読んでいたのかなと想像する場面がありました。それはおそらく、翻訳という行為を通じて過去と現在が繋がった瞬間であり、日々ニュースレターを通じて行う「現在を共有する」翻訳との違いを感じた瞬間だったのだ思います。朝食後のコーヒーやお出かけのお供、夜が深まった頃にお酒片手に読み耽るのにも素敵な一冊。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
学生時代にスターバックスに3年間勤め、卒業後、救急病棟で看護師として働く。語学力を向上させるためワーキングホリデーをすると決めており、コーヒーが好きだったことからバリスタとして働くことを目標にメルボルンへ渡豪。世界チャンピオンであり現在Barista Map Coffee Roasters の代表 深山晋作のクラスを受け、メルボルンでバリスタの仕事を掴み経験を積む。そして、一昨年に帰国後、Starbucks Reserve Barで働きながら、Barista Map Coffee Roastersで修行を積み、昨年4月よりオープンした焙煎場で、バリスタとして働いている。 毎晩仕事終わりに作るお料理。時短、簡単、美味しい、バランスや栄養学を取り入れたお料理を作れる様になりたいと思っている。
セットアップ:
抽出器具:HARIO 浸漬式ドリッパースイッチ
豆量:12g
湯量:200g(抽出量170g-173g Out)
挽き目:EK43S 12.5
湯温:91~93℃
抽出時間:2:00~2:30
手順:
- ペーパーをお湯でリンスする
- ドリッパーを浸漬にして40gを注ぎ20秒間蒸らして、透過(10秒間)
- 30秒になったらドリッパーを浸漬にして40gを注ぎ(トータル80g)20秒蒸らして、透過(10秒間)
- 1分になったらドリッパーは透過のまま120gを20秒で注ぎきり、優しく2回スピンする(トータル200g)
- 落ち切り
ポイント:
▷ 1〜2投目の40gは8秒間で注ぐ 3投目を注ぐ時はケトルの蓋を開けて、温度を落としながら20秒愛を込めて円を描くように120g注ぐ
▷ 浸漬式&透過式のハイブリッドにすることによって成分の配分、移動速度をコントロールし抽出効率をあげ、酸味ー甘味ー苦味を3分割し単純化することによって再現性をあげる。
▷ テロワール、焙煎度合い、エイジングによって2分〜2分30秒で落ちる様に湯温、挽き目、流量速度を調節する。
コメント:
一日に出会う人の一瞬を豊かにするために自分に出来ることは何か、その気持ちは看護師の時もバリスタの今も、世界どこに住んでいようと変わらず追い求めて生きています。1.8坪の”コーヒーと人が繋がる焙煎場”でコーヒーを通じて沢山の方に出会うことができ、コーヒー片手に沢山のお客様の笑顔をみられることや溢れる愛を感じれること、心から感謝しています。今後もバリスタとして、1人の人間として、成長していきたいです。
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
今日のShoutoutは、「人口4千人の旧避難指示区域に「美味しいパン屋」と「友達と行く共働スペース」を!」というクラウドファンディング。福島の旧避難指示区域の南相馬市小高区というエリアにみんなが集う場所をという目的でカフェを作ろうとしているのだそう。コーヒーやカフェが人の心や暮らしを少しでも豊かにする、そう信じているからこその挑戦、今日がクラウドファンディング最終日ですでに目標は達成しているようですが、気になる方は応援してみてください!
Standart JapanのウェブサイトやInstagram、Facebookもぜひチェックしてみてくださいね。
今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第18号スポンサーのブルーマチックジャパン、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、The Roast Expert by Panasonic、FAEMA x DKSHのサポートでお届けしました。