昨年、Standartでちょっとしたプレゼントをチームのメンバーに送り合う企画が立ち上がりました。全員が同じ予算でプレゼントを購入し、それぞれのメンバーに向けたパーソナルなレターを添えて、一旦スロバキアへ。集められた荷物は、CEOのMichalがメンバーひとりずつの箱に詰め直してから各国へ発送されました。
Standartのチームメンバーが住む、イギリス、ジョージア、ロシア、中国、オランダ、日本に発送された荷物たち。クリスマス前のちょっとしたプレゼント企画のつもりが、グローバルなパンデミックの影響からか、昨日ようやく到着しました。それぞれのメンバーが書いてくれた手紙と一緒に入っていたのは、ソックスや本、置物や料理グッズ、コーヒーやペンなど。この2年間は自分が欲しいと思ったものをネットで購入してばかりだったこともあって、予想していなかったものが届くことがこんなにも喜ばしいことだとは思いませんでした。
コロナ前は一年に一度、チーム全員が集合して過ごす時間がありましたが、2019年にバルセロナで過ごして以来、画面越し以外には全員で直接顔を合わせたことはありません。ですがフルリモートで活動する我々にとって、こうしてチームを近くに感じることができるアナログな瞬間は、大切なチームビルディングの機会になっています。
解読がかなり困難な(笑)、各々に癖のある手書きの手紙を読みながら、思わず笑みがこぼれた一日でした。最近はまた移動しづらくなってきましたが、大切な誰かにコーヒーと手書きのメッセージを送ってみるのもいいかもしれませんね!
それでは良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
変化の波に飲まれないために
ルーボトルコーヒーが米国の一部店舗でオーツミルクのデフォルト提供を開始するなど、植物性ミルクに注目が集まる一方で、細胞農業といった先端技術を駆使した畜産業の発展も同時に進んでいます。しかし技術革新がますますその速度を上げて進むなか、現在私たちの生活を支える畜産農家の人々にはどのような道が残されているのでしょうか? そのヒントが「Just Transition(公正な移行)」をキーワードにした、こちらのThe Conversationの記事で議論されています。
国連食糧農業機関によれば、現在でも世界中で摂取されるタンパク質の3分の1が畜産業によって賄われています。しかし、一部の研究では温室効果ガス総排出量の16.5%以上が同じ業界の活動によって生まれているともされています。そこで「動物に頼らない畜産業」が模索された結果、これまでに遺伝子組み換え技術と菌類を使ってタンパク質を生成する方法や、「ラボミート」の生産に用いられる細胞培養技術などが生まれ、すでに商業化されている例もあります。環境負担軽減や食糧安全保障の観点から、今後さらにこれらの技術や商品が普及していくとすると、現在畜産業に携わっている人たちはどのようにこの変化に適応していけばいいのでしょうか。上記の記事を執筆した研究者たちはエネルギー業界にそのヒントがあると言います。
エネルギー業界では脱炭素化のための業界再編に伴い、関連産業に従事する労働者の雇用が失われるリスクが高まっています。そこで、例えばカナダでは「Just Transition」専門のタスクフォースが結成され、よりサステナブルな社会へ移行する際のリスクを最小限に抑えるための支援策などを政府に提言しています。上記の研究者たちはこの動きを参考に、畜産業でもインフラ整備への助成金や先端技術のライセンス支援などを実施し、この大きな変化のしわ寄せが畜産業者だけに及ばないようにしなければならないと訴えています。
SDGsのスローガンである「Leave no one behind(誰ひとり取り残さない)」の意味について今一度考えさせられる記事でした。
その他の気になるニュース
▷ 今年3月にサンフランシスコでクィアコミュニティに焦点を当てたコーヒーイベント「Queer Coffee Conference」が開催予定。コーヒー業界におけるクィアコミュニティの不断の努力を讃えると共に、業界構造の再構築を目指します。
▷ インドネシアで初のCup of Exellenceが開催されました。入賞したのは8つの島々から集まった計26のマイクロロット。オークションは今月末に開催予定です。
▷ トイレにいったとき、尿からコーヒー臭が漂ったことはありませんか? そこまで悪いことではない(?)気もしますが、これにはポリフェノールの分解後に生まれる代謝物質が関係しているようで、体内の水分が足りていないときに起こりやすいとのこと。冬でも水分補給はお忘れなく。
▷ 生産国を中心にコーヒー業界で働く女性のエンパワメントを目指す非営利団体IWCAの韓国支部が誕生。実は消費国で最初に支部ができたのは日本だったと知っていましたか?
▷ The New York Timesが、YouTubeチャンネルを通じてコーヒー業界内外でファンベースを築いているジェームズ・ホフマンさんの経歴やプロフィールをまとめたイラスト記事を公開中。記事の最後には直伝のフレンチプレスレシピも。
What We're Drinking
今週のコーヒー
ONIYANMA COFFEE&BEER(北海道)
2016年、札幌市中心部の大通りすぐ近くにオープンしたロースタリー兼カフェ。 国内やポートランド産のクラフトビールとともに、8~12種類程のスペシャルティコーヒーを提供しています。 シングルはもちろんですが、 時には音楽やお酒、食事との掛け合わせなども通して、それぞれのコーヒーが持つ個性を飲み物として色々な形で楽しんでもらえると嬉しいです。
生産者:KIAMA COOPERATIVE
農園:Finca Corral Viejo
生産地域:ケニア ニエリ県東マティラ地区(地図)
品種:SL28
精製方法:フリーウォッシュト
テイスティングノート:グレープフルーツ、フローラル、ブラックティー、ブラウンシュガー
編集長のコメント:
今週のコーヒーは、昔から大好きな産地ケニア。SL28と聞くとついついワクワクしてしまいます。豆を挽いたそばから漂ってくるのは、酸味を感じる赤いフルーツを連想させる香り。梅干しを思い出して唾液が出てくるような感覚で、口の中がじわりと湿っていくのがわかります。カッピングの準備が整い早速口に含むと、待ってましたと言わんばかりのシトラスフレーバー。華やかな香りのあるマイヤーレモンを思い出させてくれました。ブラックティーを力強く感じ、黄金糖のキャラメル感のある甘みや烏龍茶のようなフレーバーも後に続きます。どこかコーラっぽいニュアンスも。そして温度が室温まで下がってくると、BOOM! シルキーなテクスチャと驚くほどのジューシーさが口の中で一気に爆発します。イキイキとした白ワインを飲んでいるかのようで、どこまでも口の中で転がしていたくなるコーヒーでした。(ちなみにSL28という品種は、ケニアがイギリスの植民地時代に農業研究&支援のために設立されたScott Agricultural Laboratoriesがブルボン種から選抜した品種で、SLはその研究所の頭文字から、数字は研究所が選別した品種の順番から由来しているんだとか)
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
ヤシーン・アリブガ Instagram
プロフィール:
1995年生まれ。フォトグラフィーに限らず、モーションデザインやアニメーション、グラフィックデザインなど、多方面でその才能を発揮する。
最新の掲載記事:
Standart Japan 第17号 「アナトリアのひよこ豆コーヒー:アクチャカヤの記録」
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
北朝鮮の強制収容所の実態を3Dアニメで描いた長編アニメ映画。清水ハン栄治監督が収容体験を持つ脱北者たちに10年かけて取材を行い制作した作品です。在日朝鮮人の帰還事業で1960年代に北朝鮮に戻った在日朝鮮人の4人家族が、この物語の主役。脱北した青年がバンクーバーのTED Talksで話すという設定で、収容所に強制収容される前から現在までの物語を回想するように語っていきます。強制収容所での地獄のような凄惨な生活は、胸が苦しくなり、目を背けたくなるシーンが数多く出てきます。アニメというフォーマットを選んでいる点も、この目を背けてしまうほど過酷な状況を広く訴求するするためで、なおかつ3Dポリゴンのキャラクターにしたのは制作費用の関係などではなくて、アニメでもリアルすぎる描写にしてしまうと観客が物語に入り込めなくなってしまう懸念があったためなのだとか。清水ハン栄治監督は、「さまざまなホロコーストを取り扱った映画がありますが、現在進行形の題材ではなかったりします。『トゥルーノース』はまぎれもなく現在進行形の物語であり、収容所で起きていることは、まさに世界中で起きている問題にもつながっている。」とこちらのインタビューで語っています。この映画を見てすぐに思い出したのは、1年に一度は読み返すようにしている、心理学者であるヴィクトール・E・フランクル氏が自身のナチス強制収容所経験について書いた「夜と霧」。映画のタイトルにもあるように(北朝鮮の真実というダブルミーニングでもある)、『真に重要な目標』、つまり人間とは何か、人として生きる目的は何かを、どこまでも強く問う作品でした。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
石渡 俊行 aka Toshi
・Market Lane Coffee 兼 Melbourne Coffee Merchants 勤務
・勤務歴12年
・Position: Quality Control Director
・焙煎、QC コーヒーテイスティング(カッピング)、生豆の品質管理、コロナ前は現地への買い付け
・プロフィール写真:@_mai.travel_
セットアップ:
抽出器具:Origami dripper size S/Pitchii glass jug/Origami coffee filter paper cup2/Tanita スケール/Hario Buono kettle
豆量:15g
湯量:260cc
挽き目:フィルター(ドリップ用)
湯温:90℃以上
抽出時間:2:20〜2:30
手順:
- 1湯目: 蒸らし1 0:00~0:30 40ml注ぐ。コーヒー中心部に膨らむ程度
- 2湯目: 蒸らし2 0:30~0:55 80ml注ぐ。コーヒー全体が湿る程度
- 3湯目: 260mlまで注ぐ
ポイント:
▷ Market LaneのプロバットG45(K&M)のフィルター焙煎です。レシピは一般的なものと比べ少し薄く感じますが高品質ティーの感覚で楽しめます。最近飲んだこのコーヒーにはこのレシピにしてます。
▷ 「豆量」、「挽き目」はほとんどのコーヒーに当てはまりますが、焙煎度合い、焙煎後どのくらい経っているかで多少調整します。
▷ 「手順」はほとんどのコーヒーに当てはまりますが、蒸らしの膨らみ状態で多少調整します。
▷ 3湯目を注ぐときは、ケトルが水平に円を描きながら抽出しますが、その時の湯量のペースが均等、ゆっくりでもポタポタしないよう心がけてます。ペーパー部分に直接お湯は注ぎません。
コメント:
おうちコーヒーの増えた最近、コーヒーの有難さを感じ、同時に安心してカフェで飲める日が待ち遠しくも感じます。この業界はここ数年で色々なことがありますが、美味しいコーヒーを飲んで乗り切りたいですね!
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第18号スポンサーのブルーマチックジャパン、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、The Roast Expert by Panasonic、FAEMA x DKSHのサポートでお届けしました。