前例のないパンデミック、さらに2020年からこれまでに私たちが直面してきたあらゆる問題を前にしても、気候変動が人類にとって最大の脅威であることに変わりはありません。そして私たちにはそれを食い止める手段があります。
このたび、私たちStandartはクライメイト・ニュートラル認証を取得しました。
クライメイト・ニュートラル認証を取得するためには、二酸化炭素排出量を測定し、オフセットし、削減するための数か月におよぶ取り組みが必要です。しかし同時に、すべてのブランドそして個人が、炭素排出量を抑えるために、今すぐにできる、そしてすべき行動でもあります。
Standartを紙媒体で発行することは、私たちにとって極めて重要なことです。絶えず目に入るデバイスの光は、私たちの集中力を削ぎ、不安レベルを高めています。一方良いコンテンツとは、じっくりと腰を据えて、さまざまな角度から楽しむ価値があります。コーヒーが何世紀にもわたってそうであったように、Standartも日常の喧噪から離れてリラックスする場を提供し、会話を弾ませる、いわば読む人の心を豊かにするものであってほしいというのが創刊当初からの変わらぬ願いです。
しかし出版にはコストがかかり、私たちの活動には炭素価格という値札がついていることも理解しています。コーヒー業界と環境の持続可能性は、創刊以来、コンテンツのDNAの一部でした。そして今日、300以上のクライメイト・ニュートラル認証を受けたブランドとともに、気候のために有意義な行動を取れることを嬉しく思います。
なぜ今なのか?
2020年と2021年がビジネスにとって困難な年であったことは周知の事実です。予想外の障害、事業の大幅な転換、新しい働き方に直面し、私たちは大きな課題に個人として、チームとして、そして社会として、立ち向かうことができるのだと学びました。世界では毎年、約600億トンの温室効果ガスが排出されています。その主要素である二酸化炭素の排出量に関し、雑誌の制作や出版に必要な資源のために、出版業界は大きな責任を負っています。
今、私たちが責任を果たさなければ、パリ気候協定で定められた2050年の目標を達成することはできません。そしてこの目標に部分点は与えられません。達成すれば、気候変動による壊滅的な影響を避けることができます。しかし達成できなければ、何十億もの人々の地球上の生活が変わってしまいます。
コーヒーの世界の美しい側面だけでなく、醜い面をも伝える出版物として、私たちは持続可能性を中核的なテーマと価値観のひとつと考えています。この点について、Standartの編集者ルーク・アダムスは次のように語っています。「私たちはコーヒー業界における(生態学的な観点だけでなく、経済的、社会的、技術的な観点を含めた)持続可能な取り組みを支持し、その重要性を強調すべきだと考えています。そして、その方針に則ってページを埋める権利を躊躇なく守っていきます」
私たちはどうやってここにたどり着いたのか?
私たちはClimate Neutral社と協力して、昨年の二酸化炭素排出量を測定し、相殺し、削減することで、第一歩を踏み出しました。このプロセスには多大な時間とリソースが必要でしたが、気候変動がもたらす脅威に比べれば、最終的には妥当なコストです。Climate Neutralの認証マネージャーであるベラ・トダロ氏は、「認証プロセスを通じて、各ブランドは気候変動への影響を理解し、対処するために何千時間も費やしてきました」と話してくれました。私たちもその仲間に加わったのです。
測定
2020年のStandartのカーボンフットプリントは300トンでした。この数字を導き出すために、パートナー企業の業務中やチームメンバーの出張時に発生する二酸化炭素を含む、雑誌の制作・配送過程で発生するすべての排出量を調べました。量としては出版業界全体で見るとすずめの涙に過ぎないことは承知しています。それでも私たちは、リモートワークやFSC認証を受けた印刷紙を使うことで、排出量を削減し、今後もこの問題に取り組み続けていきます。
オフセット
カーボンクレジットを購入し、排出量を実質ゼロにしました。このクレジットは、「1% for the Planet」の認定を受けた、自然環境を守るための3つのプロジェクトに投資されています。
プロジェクト1:ミャンマーにおけるマングローブの再生
「Sea of Change」プロジェクトは、ミャンマーの海岸沿いに600万本のマングローブを植え、マングローブの重要な生息地を回復させることを目的としています。ミャンマーではかつてマングローブが盛んに生育されていましたが、薪や農地を確保するために伐採が進んだ結果、現在では元のマングローブ林の16%しか残っていません。マングローブは陸生の樹木の5倍の炭素を4倍の速さで取り込むことができるという、素晴らしい炭素隔離能力を持っています。また、マングローブは、暴風雨から海岸線を守り、海岸浸食を軽減し、小魚の苗床として生物多様性を支えるなど、数多くの重要な生態系上の利点を持っています。このプロジェクトでは、ミャンマーでのマングローブの再生に加えて、地元のコミュニティと協力して、マングローブの周囲に戻ってきた魚を対象にした持続可能な漁業を開発し、新たな方法でミャンマー経済を支えつつ、森林破壊の圧力を軽減することを目指しています。このプロジェクトの詳細は、こちらのリンクからご覧いただけます。
プロジェクト2:ブラジルの林業
「Envira Amazonia」プロジェクトでは、アサイー、ゴム、薬用植物の販売を商業化することで代替収入源を創出し、ブラジル・フェイジョ近郊の49万4,000エーカー以上に広がる熱帯雨林の伐採を抑制しようとしています。この地域は、牧畜と自給農業が地域社会の重要なライフラインとなっているため、現在、森林破壊の危機にさらされています。熱帯雨林を持続可能な方法で活用して新たな収入源をつくれれば、生態系を維持するインセンティブが生まれます。さらにこのプロジェクトでは、地元の土地所有者を対象に、生態系を維持しながら作物を収穫する方法を学ぶための農業普及トレーニングを行っています。このプロジェクトによる全体的な生態系への影響としては、水や土壌の質の向上、熱帯雨林の保護などが挙げられます。プロジェクトの詳細はこちらをご覧ください。
プロジェクト3:中国の林業
「Inner Mongolia Wu'erqihan」プロジェクトでは、中国のウルキハンにおける不要な伐採を防ぎ、森林生態系を保護するために、伐採方法を変更することを目指しています。このプロジェクトは、森林の炭素ストックを維持するだけでなく、生息地を維持することで生物多様性の保全にも寄与すると期待されています。また、木の根は森林の土壌侵食防止にも有効です。詳しくはこちらをご覧ください。
リデュース
最後になりましたが、私たちは、今後12〜24か月間の排出量を削減するために、削減行動計画を作成しました。
- 環境負担がより小さいパッケージをサプライチェーン全体に導入
- 100%再生紙に切り替え
- 分散型の組織と制作体制の継続
プロセスの詳細をお伝えするのには、以下の理由があります。
- 私たちが気候変動に対する責任を果たすためにどんなアクションをとっているかを示し、透明性を向上したい
- Standartがきっかけとなって他のブランドが行動を起こすことを期待したい
クライメイト・ニュートラル認証を取得するとはどういうことなのか?
次号より、StandartとStandart Japanの全号に「Climate Neutral Certified」のラベルが掲載されます。クライメイト・ニュートラルとは、カーボンニュートラルをシンプルで身近なものにすることで、気候変動の解決を目指す非営利団体です。同団体CEOのオースティン・ウィットマン氏はラベルの意義について次のように語っています。「消費者は経済を動かす大きな力を持っており、その力は消費者が支持するブランドの行動を通して発揮されます。クライメイト・ニュートラルのラベルは、消費者が気候変動対策への投資に積極的なブランドを見つけるのを手助けするものです」
私たちと同じように今年認証を受けた300以上のブランドは、すべて同じプロセスを経て、排出量の測定、オフセット、削減を行い、その結果約70万トンの炭素排出量が削減されました。これらの企業は、アパレルからコーヒーカルチャーをテーマにした独立誌まで、さまざまな業界で製品やサービスを提供しています。どんなブランドがあるのかはこちらからご覧ください。
未来へ向けて
クライメイト・ニュートラル認証ブランドと一緒に活動できることを嬉しく思います。私たちは、喫緊の脅威に立ち向かうため、今すぐ行動を起こすというクライメイト・ニュートラルの使命を信じています。一緒に気候変動への取り組みを加速させていきましょう。
いつもStandartをご愛読いただきありがとうございます!