「Roasted in Origin」の可能性とPECA

「Roasted in Origin」の可能性とPECA

Standart Japan第16号でパートナーを務めてくれたコーヒー商社のCaravela。この記事では、同社CEO・共同創設者のアレハンドロ・カデーニャさんのインタビューをお届けします。

最近、生産国での焙煎に関する話を耳にすることが増えましたが、アレハンドロさんは実現の可能性やこれからの動向についてどう見ていますか?

まず、生産国での焙煎が注目すべきトピックであることは間違いありません。市場としても成長しつつありますし、今後10年でさらにその重要性は増していくでしょう。すでに生産国で多くのコーヒーショップやロースターが誕生しており、質的には消費国と比較しても遜色ありません。

「私は、高品質なコーヒーに対する需要の拡大とともに、生産国で焙煎されたコーヒーが成長していくことを願っています。そうすれば生豆の価格も上昇し、従来は主に消費国が独占していた付加価値の一部を、生産国にシフトできるようになります」

これらのビジネスの多くは、生産地との近さをアドバンテージに、生産者と消費者との間にある距離を最小限にすることで、消費国で何十年にもわたって問題視されてきた、両者の二項対立の構造を打破しようとしています。生産者からすれば、地元のロースターと付き合うことでエクスポーターと取引するよりも、現実的で競争力のある価格で自分たちのコーヒーを販売できるケースもあります。

 

 

その結果、地元の消費者も自分たちの国で生産された最高品質のコーヒーを味わうことができるのです。そして何よりも重要なのは、ロースターが焙煎を終えてから5〜7日で消費者に直接コーヒーを届けられるという点です。これまで生産国に拠点を置くロースターは消費国にいるロースターと比較して、消費者との距離に悩まされてきましたが、その問題が「Roasted in Origin」によって解消できるわけです。

中南米のコーヒー生産者の中には、海外の消費者向けにウェブサイトを立ち上げ、自宅でコーヒーを焙煎・包装している人も少なくありません。私たちもコロンビアで、ある程度のボリュームが必要な一部のロースターに生豆を販売しています。私は、高品質なコーヒーに対する需要の拡大とともに、生産国で焙煎されたコーヒーが成長していくことを願っています。そうすれば生豆の価格も上昇し、従来は主に消費国が独占していた付加価値の一部を、生産国にシフトできるようになります。

Caravela独自のプログラム「PECA」を通じてどんな活動を行っているのか教えてください。また同プログラムの資金はどのように賄われているのでしょうか?

PECAプログラムは、私たちの活動の根幹をなすものです。素晴らしいコーヒーを今後も継続的に調達していくためには、生産者との地道な努力が欠かせません。このプログラムは2011年に生まれ、志を共にする私たちの顧客、つまりはロースターからの資金によって運営されています。

PECAはコーヒー生産者のための教育プログラムで、農園経営、カップクオリティ、持続可能性という3つの分野にフォーカスしています。40人以上のスタッフが講師として継続的に生産地を訪問し、生産性向上や病害虫の管理、カップクオリティ向上のための施策などについてのトレーニングを、生産者とその家族に提供しています。プログラムの目的は、知識を共有しながら、生産者の収益を増やすことで、サプライチェーンの弾力性を高めることにあります。あまたPECAチームが提供するアドバイスやトレーニングは生産者ごとにカスタマイズされるため、それぞれの進捗を確認し、生産者が本当に利益を得ているかをチェックすることができます。

PECAプログラムのメンバーであるコロンビア・ウイラ州在住のカルロス・アルトゥーロさん

私たちが協業している生産者は、品質と価格の関係を十分に理解しています。そして実際に収益が増えれば、農園や家族のために投資する余裕が生まれます。さらにPECAチームはロースターや生産者と共同で双方に利益をもたらすプロジェクトを開発し、すべての人がより大きな価値を得られるよう活動を行っています。例えば、昨年はイギリスのリーズにあるNorth Starと共に、エルサルバドルのチャラテナンゴにある農園の乾燥工程やウェットミルのインフラを改善し、発酵過程で発生する汚染を軽減するための水処理システムを導入しました。

PECAの重要な功績として、時間の経過とともにコーヒーの品質が向上していることが分かっています。ニカラグアの農家、ダニエル・ロドリゲスさんは、「PECAチームがやってきて技術的なサポートをしてくれたおかげで生産工程が改善し、とても感謝しています」と話してくれました。同じくニカラグアの農家、ドナルド・エフライン・ロケさんは、「Caravelaの貴重なアドバイスには、いつも新しい発見があります。私だけでなく、私の農園で働く人たちもスペシャルティコーヒーの扱い方を学びました。PECAのチームは、収穫時や精製時だけでなく、出荷前にも農園に足を運んでくれるので、学びの機会が絶えることはありません」 と言っています。

ジェンダー平等の実現に向けたPGEとのパートナーシップについて教えてください。サプライチェーンに参加するすべての女性労働者をどのように支援されているのでしょうか?

コーヒーにおけるジェンダー平等は、現状ジェンダーの専門家ではなくコーヒー業界で働く人たちによって定義されており、その結果 「女性のコーヒー」が生まれました。それが意味するものは、「女性が栽培した」、「女性が所有する農園で栽培された」、「女性が主導している」などさまざまで、ゆるやかに定義されています。しかしご存知の通り、コーヒー業界における労働力の約半分を女性が担っていながら、その存在はある意味表舞台から隠されてしまっています。

「女性は、サプライチェーン全体の成功と持続性に欠かせない存在なのです」

通常コーヒー農園では、収穫前と収穫後の労働力の40〜80%を女性が担っています。そのため、女性はコーヒーの品質や収穫量、つまりコーヒー農園の収益性を左右する重要な立場にあるのです。したがって、「女性のコーヒー」という概念には、農園の所有権以外の要素も含まれてしかるべきです。女性は、サプライチェーン全体の成功と持続性に欠かせない存在なのです。

 

ペールのカハマルカやクスコにあるバイイングステーションで働くCaravela PECAチームのメンバー

 

PGEのキンバリー・イーソンとグレッグ・ミーナハンからジェンダー・エクイティ・インデックス(GEI)の話を聞いたとき、ジェンダー平等をゼロから構築するための包括的なフレームワークと戦略の開発に取り組むプロジェクトに出会えたことを非常に嬉しく思いました。またCaravelaのような企業が既に実施しているエクステンションプログラムやアドバイザリープログラム(私たちの場合はPECA)に、アドオンのような形で統合できる仕組みにも惹かれました。

このプロジェクトは、私たちが農家と共同で行っている取り組みを評価するためのツール(指標)を構築すると同時に、ジェンダー平等を実現するためのアドバイスやリソースを提供してくれます。GEIの最終的な目標は、技術移転におけるジェンダーの壁を克服することです。その対象は適正農業規範(GAP)研修や農園改修、収穫後の精製、金融リテラシー研修、品質管理研修、Qグレーダー資格など多岐にわたります。これらの問題に現場で取り組むことで、生産者の収益性と弾力性を高めていきたいです。

この記事はCaravelaの協力のもと制作されました。