今回のMeet Our Partnersでは、Standart Japan Issue 8をサポートしてくれた、コロンビアの生豆エクスポーターCOCORA COFFEEのCarlos Jaramillo(カルロス・ハラミージョ)さんにお話を聞きました。
――まずはCOCORA COFFEEの成り立ちについて教えてください
ことの始まりは2011年、韓国にコロンビアの高品質なコーヒーを紹介するインポーターとしてビジネスをスタートさせました。当時のアジアでは、より「良いコーヒー」を求める人々が増えつつあったんですよ。
その頃は、アフリカや中米から面白いコーヒーがアジアに入ってきていたんですが、私たちの母国であるコロンビアのコーヒーの味はあまり評価されておらず、なぜそんな事が起こっているのか、その理由を探ってみることにしました。
するとすぐに、さまざまな背景が見えてきて、高品質なコーヒーをアジアまで持ってくるには、他とは違ったやり方で生産者との関係を築いていかなければならないとわかり、COCORA COFFEEを立ち上げました。
――エクスポーターとして普段の仕事ではどんなことを意識していますか?
やはり品質が一番ですが、それにも増して、高品質なコーヒーができるまでの裏側で一所懸命働く人たちのことを大切にしようと意識しています。コーヒーが生産地から消費国に届くまでには色んなプロセスを経なければいけないうえ、どこでも間違いが起きる可能性があります。
会社を立ち上げた時に、コロンビアのコーヒー業界の問題として特に意識したのがインセンティブシステムでした。コロンビアの国内市場はあまり柔軟性に欠けているところがあり、売りと買いどちらを見ても、ウォッシュドのアラビカコーヒーの生産を促すようなシステムになっています。生豆をスクリーンサイズと欠点の数だけで評価するというのもいい例ですね。
このシステムがあったからこそ、コロンビアはウォッシュドアラビカコーヒーの生産国として大成しましたが、その代わり、特別なコーヒーが生まれづらい環境ができてしまったと感じています。だからCOCORA COFFEEは、コロンビアの高品質なコーヒーを世界に広め、生産者と長期的な関係を築くというアプローチをとっています。
――コーヒーの2050年問題など持続可能性にますます注目が集まっていますが、COCORA COFFEEではなにか特別な取り組みを行っていますか?
COCORA COFFEEは農法や生産者の知識向上のために色んなことに取り組んでいます。
そのなかでも特に、ウイラ地域の女性農家連合との取り組みには注目しています。この団体は、自分たちが生産するコーヒーという商品の品質を上げることで、生活水準の向上を目指す女性の農家で構成されています。
COCORA COFFEEとの協業が始まってからもう5年が経ち、すでに彼女たちは独自の有機肥料をつくるまでになりました。また、メンバー間の分業を促し、コストの低減や品質の向上に取り組んでいます。
COCORA COFFEEとしては、業界の著名人を招いたワークショップを通した、新しい農業技術の普及や現地でのフォローアップを行っています。今年の3月には、精製工程の専門家かつ受賞歴のある農家のMauricio Shattahさんに参加してもらい、コーヒーの質を上げるための精製技術についてのワークショップを行いました。
――日本市場とCOCORAがこれまでメインで営業してきた韓国市場の違いについて教えてください。
味の好み以外にもかなりの違いがあります。まず、日本ではコーヒーが昔から飲まれているため、スペシャルティコーヒーを扱う日本企業は経験豊富かつ、コロンビアのコーヒーでも具体的にどんなものが欲しいのかという明確なイメージを持っていることが多いですね。
一方、韓国のコーヒーの歴史は日本ほど長くはないものの、業界にいる人の知識量も消費者の興味も急激に高まってきています。そのため市場はダイナミックで、今までになかったフレーバーも積極的に受け入れる土壌があります。
また日本と韓国だけでなく、東アジアの大部分で近年コーヒーの品質が上がってきているように感じます。
――Standart Japanとの出会いについて教えてください。
日本でトシ(Standart Japan編集長)に会ったときですね(笑)。でもStandartの英語版が行きつけのお店に置いてあって、Standart自体との出会いは私の一目惚れのようなものでした。
美しいデザインと、コーヒー業界の今に関する明瞭かつ的を射た文章が特に印象的で、Standartと私たちが大切にしているものとの間に共通点を感じたのもサポートにいたったポイントです。
――Carlosさんご自身についても教えていただけますか?
Hola! COCORA COFFEEのカルロス・ハラミージョです。
もともとうちの家系はコーヒー農家で、父も母もコーヒーのおかげで教育を修めることができました。でもコロンビアでは最近、誇りを持って「コーヒー農家をやってます」って言える人が減ってきてしまっているのが残念なんですよね……。
でも僕自身が昔からコーヒーに携わっていたかというとそうではなくて、大学に通っているときに訪れたあるカフェがコーヒーの世界に入るきっかけでした。正直そのカフェについては名前も忘れてしまったんですが、確かロンドンのコベントガーデンあたりにあって、そこで初めてシングルオリジンのコーヒーを口にしたんです。その時に、コーヒー業界が良い方向に進んでいる感じがして、自分もその一部になりたいなと思いました。
――忘れられないコーヒー体験はありますか?
コロンビアのグアイタラ川流域にあるナリーニョという栽培地で飲んだ一杯ですかね。これまで色んな種類のコーヒーを試す機会に恵まれてきましたが、オリジンで飲むコーヒーはやはり格別です。
この素晴らしいコーヒーを栽培する農家の方々との出会いには心が震えました。険しい渓谷を越えると、まだ手つかずの美しい景観が残されているんです。ここでの体験は私だけでなく、一緒にナリーニョへ行った人たちの心にも深く刻まれています。
――コーヒー業界に入っていなかったら、自分がどんな仕事をしていたと思いますか?
Standartのデザイナーですかね(笑)。
――Standart Japanの読者の皆さんへ一言お願いします。
こうやって日本の皆さんに僕たちのことをお伝えすることができて、とても嬉しいです。これはCOCORA COFFEEの長年の夢でもありました。願わくば日本では、コーヒーの質だけでなく、そのコーヒーがどこでどのように生産されたか、そして素晴らしい一杯をお客さんに届けるためには何が必要か、といったことと真剣に向き合うロースターの方々と出会えたら嬉しいです。
Standart Japan Issue 8、楽しんでくださいね!