今週のStandart Japanは、次号の校了に向けて怒涛の1週間でした。来週も続きますが、雑誌のリリースとは違うタイミングで3か月ごとに訪れる、誌面とじっくりと向き合う時間です。何度も推敲を重ね、何度見返しても見つかる誤字脱字にウンザリしながら、完成度の高い誌面を作っていきます。
忙しいと何故か現実逃避したくなるもので、休憩がてらにBarista Hustleから届いたニュースレターを開くと、Standart Japan 18号のインタビューや以前のニュースレターでも登場した発酵デザイナーのLucia Solisさんが酵母に関するとても勉強になる記事を公開されていました。生産者向けの情報ですが、酵母というものの正しい理解や、天然酵母と意図的に酵母を加えた処理の違い、酵母はどれくらい入れたらいいのかなど、精製処理のプロセスで酵母がどういった役割を担っているのかがわかります。彼女のポッドキャストは技術的な話も含めタイムリーかつ生の情報が得られるので、とにかく学びが多く、家事をしながら、移動しながら、よく聞いています。仕事が進まないときに良ければ気晴らしにでもぜひ😉
今日はこの辺で。本日も良い1日を!
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
ローカライズとカスタマイズ
2020年創業ながら既に7か国で200以上の店舗を展開するコーヒー企業「Flash Coffee」。シンガポールを拠点にアジア地域へのビジネス拡大を続けており、昨年12月には東京・表参道に日本第一号店もオープンしました。大型資金調達、短期間での店舗拡大、さらには店舗の大半が黒字という同社の成功の背景について、CEOのデイヴィッドさんがインタビューで語っています。
1つ目が、各市場に合わせたメニューのローカライズです。世界トップレベルのバリスタ監修の下、各国の嗜好性を加味したメニューを新たに作成することで、新規市場へスムーズな参入と拡大に繋がっていると言います。ちなみに日本ではオリジナルメニューとして「みたらしラテ」が提供されています。そして2つ目が機能豊富なアプリ。事前オーダーによる待ち時間の短縮化やデリバリーサービスが、テクノロジーに精通したミレニアム世代の多忙なライフスタイルにフィットした結果、現在大半のオーダーがアプリを通じて行われているとのこと。加えてアプリオーダーの浸透はオペレーションの効率化をもたらし、結果として高品質なコーヒーをより手頃な価格で届けられるという好循環を生んでいると述べられています。
あらゆる企業のテック化が進む中、消費者は自身の生活リズムに合わせた商品やサービスのカスタマイズが可能となっています。その恩恵を享受しつつ、時折コーヒーショップに流れるおだやかな時間に自分のリズムを委ねる、そんな時間も大切していきたいですね。
その他の気になるニュース
▷ 現在SCAポーランド支部が中心となって、ウクライナ難民への移動、住居、職業機会の支援を行っています。その他ウクライナを支援するコーヒーコミュニティ・ブランドの活動の一部がこちらのSCAウェブページにまとめられています。
▷ バンクーバー市内で、使い捨てカップへの追加料金制度が廃止に。同条例がホームレスや低所得者への排他的な措置になり得ることから、政府はリユーザブルカップの利用促進へと方針転換する予定です。
▷ 世界初の分子飲料プリンター「Cana」が米国で予約開始。カートリッジ内の圧縮液と家庭用水を化合させることで1000種類以上のドリンクの作成ができ、アルコール度数やカフェイン量等の微調整もできるそう。
▷ これ一本でグラインドから抽出までできるポータブルコーヒー器具「All-In-One-Grinder」が誕生。グラインダー下部はトラベルマグとしても利用できる優れもの。あとは、お湯だけです。
▷ 埼玉県上尾市の福祉作業所「領家グリーンゲイブルズ」が販売するコーヒー豆、その名も「僕らは耳で焙煎をする」。視覚障がいをもつ焙煎士が、豆の色ではなく生豆の水分量を音で聞き分け焙煎を行っているとのこと。全種類味わってみたい👀
What We're Drinking
今週のコーヒー
愛知県名古屋市川名というエリアの大きな公園の目の前で、自家焙煎のスペシャルティコーヒーと、季節の食材を使用した心温まるお菓子を提供するカフェ「haru.」を夫婦で営んでおります。
日々に小さな幸せを。
美味しいケーキと、美味しいコーヒーで。
この想いをコンセプトに、コーヒーとお菓子のペアリング体験を提案しています。
生産者:マリア・アントネリャ・アモルソ
生産地域:パナマ チリキ県ボケテ地区アルト・キエル(地図)
品種:ゲシャ(ゲイシャ)
精製方法:ウォッシュト
テイスティングノート: ジャスミン、レモンキャンディ、アールグレイ、シルキー、クリーン
編集長のコメント:
今週は、意外にもThe Weekend Brew初登場の産地パナマでした。しかも品種はゲシャ(ゲイシャ)とあって、期待値も高め。グラインダーを持つ手にも力が入りました。お湯を注いで香ってきたのは、フローラルかつ柑橘系、特にハーブっぽさを感じるオレンジの香り。ジャムのような濃縮感が香りから感じられます。口に運ぶと、スーッと入ってきて、オレンジピールの香りが抜けていきます。洋梨のようなまろやかなジューシーさと、温泉のお湯を思わせるトロリとした質感。このスーッと体に入ってくる感覚が特徴的で、お茶のようにいくらでも飲めそうな予感がします。甘さとハーブやジューシー感がバランスよく、まるで上質なスパイスと水と自然な甘さで作ったコーラの炭酸が抜けた後の液体のような(想像しにくい?)。クリーンな味わいは透き通る美味しさです。昼下がりに太陽が差し込む部屋で、風に揺れるカーテン越しに外を眺めながら飲んでいる情景が浮かぶような、心安らぎ、美味しさに満たされるような幸福感を味わえるコーヒーでした。
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
クリスティーナ・ダウラ Instagram
プロフィール:
ある日美大卒業後に就いたアートと関わりのない仕事を捨て、自分が本心から望んでいたイラストとマンガの道に進むことを決意する。現在はフルタイムのイラストレーターとして、The New York TimesやThe New Yorkerなど大手企業をクライアントに活動しながら、世界各地で展示も開催している。
最新の掲載記事:
Standart Japan 第18号『僕の周りのジェンダーギャップ』
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『IN/SECTS』
地域、アイデア、共感から生まれるつながりや動きに着目した大阪発ローカルカルチャーマガジン『IN/SECTS』。2006年に創刊され、先日最新号Vol.14「言葉は楽しい」が発売されました。本号では、小説家、詩家、演出家、文化人類学者、音楽家、母親、父親、子ども、編集者、コラムニスト、グラフィックデザイナーなど、さまざまな人々へのインタビューを通じて言葉とそのあり様について探っています。フードエッセイスト平野紗季子さんの「味の表現の話」、今まさに言葉を習得しようとしている子どもたちとの日常を綴った「子ども言葉日記」など、興味深い記事が盛りだくさんです。
中でも印象に残っているのが、先天性ろう者である写真家・斎藤陽道さんへのインタビューです。斎藤さん曰く、例えば「重い声が聞こえる」という表現はろう者の立場からだと「声がずしんずしんと轟く」と書き換えられるように、聞こえることが前提とされる表現と手話の世界には大きな乖離が生じています。しかし、その乖離は聴者感覚が前提となっている日本文学における新たな表現の誕生、ひいては社会の意思疎通の可能性を拓く大きな一歩になり得るという斎藤さんの言葉には、思わず言葉の美しさと可能性を感じずにいられませんでした。
パンデミック以降テキストやオンラインでのコミュニケーションの比重が増す中、改めて言葉を交わすことの尊さに目を向けていきたいと感じました。読み進めるにつれて心の緊張がほぐれていく、そんな言葉の魅力が溢れ出す一冊です。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
真嶋 萌 aka もーちゃん、めがね、まるめちゃん、まるちゃん
『萌』と書いて『もゆ』です! こんにちは! 和歌山出身です! 学生のときにStarbucksでカフェで働くことの楽しさとコーヒーと食べもののペアリングの魅力に出会いました。 東京に飛ばされて社会に揉まれたあと、sunday bake shopと出会って働き始めました。その当時は毎週金曜日はおかしとコーヒーのペアリングがおすすめの日で、やるのは簡単なことじゃなかったけれど、おかしに入るスパイスやフルーツの香りがペアリングのコーヒー合わさったときに、ぶわっと広がる新しい世界には何度も感動しました! 今はおいしいコーヒーをもっと身近に!という想いで瓶詰めしたコールドブリューコーヒーやチャイを自転車でお届けに行ったりしてます! ハマってるのはレコード! 夫の上司の川住さんが譲ってくれたプレーヤーがついにうちにきて、まだレコードは2枚しかなくてリピートしすぎて飽きてきたのでどんどん増やして家時間楽しみたいです!
セットアップ:
抽出器具:HARIO V60 01
豆量:14.5-15.5g
湯量:240g
挽き目:comandante 27clicks
湯温:90-92℃
抽出時間:2:30~3:00
手順:
- 60gお湯を回し注ぐ
- 注いだらすぐドリッパーを回す
- 少し待って120gまで注ぐ
- 少し待って豆を踊らせるようなイメージで180gまで注ぐ
- 少し待って240gまで注ぐ
- 落ち切るまでご自由にー!
ポイント:
最初のドリッパーを回すときはこぼれないぎりぎりくらいまでぶんぶん回します。60g、120gまで注ぐときはお湯はまっすぐと落とすイメージで回し注ぎ、180gまで注ぐときはお豆が踊るような感じで少し大袈裟に注いでみてください! 最後に240gまで注ぐときはお豆たちを乱さないように真ん中に静かに注ぎます!
コメント:
美味しいコーヒーを『届けに行く』活動を今後も続けていきたいと思っています! コーヒーがほしい現場やシーンがあればぜひメッセージくださいー!
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
今日のShoutout!は、バリスタ オカザキさん。最新号のStandartに付いてくるボリビアコーヒーの美味しい淹れ方を動画でご紹介してくださっています。こうしてStandartや付録のコーヒーで、読者の皆さんが自由に遊んでくださるのが本当に嬉しいです😁ありがとうございました!
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第19号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、カラベラコーヒー、Toddyのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)