おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
今週は仕事から少し離れて1週間ほど休暇をとっていました。前半は、次号の校了前の心の状況を表すように散らかった部屋や家の片付けをしたり、ゆっくり料理をしたり、サウナに本や映画・アニメを楽しみました。そして後半は家族とキャンプへ。田舎で育ったせいか、自然に囲まれた場所に行くとエネルギーがチャージされるような気分になります。虫取りからスイカ割り、川遊びに花火と、力一杯夏を満喫してきました。
毎回旅先では、サクッと読める本を持って行くことにしているんですが、今回は短編小説「海と山のオムレツ」(カルミネ・アバーテ著)を旅のお供にしました。15世紀にオスマン帝国の侵略から逃れ、バルカン半島からイタリア南部にたどり着いたアルバニア人たち。アドリア海を渡り異郷の地に移り住んだ先祖から代々引き継がれてきた言語や文化、特に食文化通じて、カラブリア州出身の作家が成長していく過程を綴った自伝は、行ったこともない土地や食べたこともない料理でも、その情景が浮かんでくるような素晴らしい作品でした。
食べ物は、それを口にした場所の記憶を色濃く残してくれます。今回の旅でも、旅先でその土地の野菜や肉を仕入れ、料理して口にすることで、強く記憶に残る時間になったように思います。
来週はいよいよ最新号のリリースです。全国発送は10日ごろからになります。次号は特別な号です、楽しみにしていてください。
それでは、本日も良い週末を!
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
Less is Moreにかかるコスト
近年ハワイ州では、甲虫コーヒーノミキクイムシによるコーヒーの害虫被害が広がっています。主にコーヒーの収穫量減少や品質低下を招くことで知られており、2019年時点でその被害額は約10億円に及んでいるとのこと。ハワイ州は、州内にコーヒーノミキクイムシの天敵であるカリバチを放つ施策を検討するなど、害虫対策は同州の喫緊の課題となっています。そんな中、先日同州の害虫対策に関する新たな研究が発表。それによると、コーヒーノミキクイムシによる被害対策として、コーヒーチェリーの収穫頻度を上げることが、農薬の使用以上に効果的であることが判明したそうです。
実験では、ハワイ州内の10の農園を、①従来型:頻繁な農薬散布と、最低限の農場の衛生管理及びチェリーの手入れ・収穫を実施する農園、②耕種的防除型:最低限の農薬散布と、頻繁な農場の衛生管理及びチェリーの手入れ・収穫を実施する農園、の2つに分類し、一定期間後の農園の状況を比較。その結果、後者の農園では、コーヒーノミキクイムシの発生率が著しく低下したことが分かりました。なんでも、コーヒーノミキクイムシはメスの成体の産卵時期を除き、生涯のほとんどをコーヒーチェリー内部で過ごすため、農薬の効果が出にくいのだそう。反面、農園内の衛生管理の徹底や、収穫頻度を上げて余分なチェリーの取り残し・放置を避けるといった対策の場合、その効果が如実に現れたというわけです。さらに②の農園では、チェリーの収穫量増加、精製後(ナチュラル製法)のコーヒーの品質の向上、農薬コストの低下による純利益の増加なども見られたと報告されています。
しかし、ハワイ州は世界のコーヒー産地と比較しても生産経費が高く、収穫頻度が増えることによる人件費の高騰が大きな障壁になる可能性が挙げられます。そのため今後研究チームは、生産過程だけでなく、精製・焙煎時の品質レベル、最終的な利益率を含むさまざまな費用対効果を踏まえた上で、コーヒー農家にとって最良なマネジメント方法を模索していくとのことです。
気になるニュース
▷ コーヒー業界全体の女性のエンパワメントを図る非営利団体IWCA (International Women’s Coffee Alliance)が、創立20周年を記念した年次総会をエチオピアで開催予定。一般参加者向けのチケットでは、オリジントリップのオプション選択も可能です。
▷ 韓国のスターバックスが、トレンタサイズ(約916ml)のコールドビバレッジ用カップの試験運用を開始。近年Z世代を中心に高まる、コールドビバレッジ需要への対応と言えます。ちなみに、昨年同社の韓国におけるドリンク売上の内、約75%がコールドビバレッジだったとのこと。
▷ ダブリン発のコーヒーロースター「クラウドピッカーコーヒー」が、ダブリン空港内にフラッグシップカフェを3店舗オープン予定。空港におけるスペシャルティコーヒー体験の新たな先進事例となりそうです。
▷ オニキスコーヒーラボが、チョコレートに特化したカフェをオープン予定。カフェにはチョコレートの加工設備が併設され、消費者がビーントゥバーの魅力を体験できる空間になるとコメント。なお同社は、シングルオリジンチョコレートの商品ライン「テロワール」を2016年に立ち上げています。
▷ 韓国メーカー「LGエレクトロニクス」から、カプセル式コーヒーメーカーが登場。一度に2個のカプセルを抽出できるカスタマイズ性や、アポロ11号を彷彿させるボディ。マシン底面のディスプレイから映像コンテンツを流せるものの、カップを置くと画面が隠れてしまうという奇抜なデザイン。情報過多でお腹いっぱいです。
物足りないあなたへ
ワールドコーヒーポータルが運営するポッドキャスト「5th WAVE」の最新回に、2023年ワールドバリスタチャンピオンのウム・ボラム氏が登場。ベトナムで初のコマンダンテチャンピオンシップが開催。
コーヒーイベント
▷ 福岡:8/2(水)〜8/7(月)に、Kyushu Asia Coffee Festivalが、博多阪急 8階催事場にて開催予定!
▷ 長野:軽井沢で、「すみだCOFFEE FESTIVAL in 軽井沢2023」が8/5(土)~8/20(日)に開催予定!8/5には、「ビギナーズハンドドリップ大会」も開催されるそうですよ!応募はこちらから。
▷ 長野:「みよたコーヒーウィークエンド by 長野コーヒーフェスティバル」が、8/26(土)〜8/27(日)に開催予定!
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
三角フラスコ 新潟(地図)
世界中の真摯に、あるいは斬新に栽培に取り組むコーヒー農家さん、研究者さんからのコーヒー生豆をフェアトレードし、その生豆の持ち味を最大限に活かす焙煎を狙う、調理師が営む自家焙煎コーヒー店です。新潟で2回の移転を乗り越えつつ、またもや移転の危機に直面しており、焙煎どころか不動産屋ばりに地域の物件情報に詳しくなっております。
生産者:リカルド・ペレス氏
生産地域:コスタリカ ゼルセロ ウエストバレー サンタルシア農園(地図)
品種:カトゥーラ
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:キャラメル、レッドワイン、ピスタチオ、トースト、シロッピー
編集長のコメント:
袋を開けると、バターやベリー系の甘い香りが立ち上ります。お湯を注いだカッピングボールからは、墨汁のようなニュアンスを感じる香りも。一口啜ると、完熟して柔らかくなったプラムのような、甘くてジューシーでまったりとした味わいが広がります。ブルーベリーも彷彿とさせてくれる、程よく心地よい酸味も。飲み終えた後に鼻に抜けていくのは、バルミューダで仕上げたトーストにバターをたっぷり塗ってかぶりつく感じのロースト感。ウッドチップも浮かびました。温度が下がってくるとより質感がリッチに感じられ、赤ワインのカベルネソーヴィニョンのようです。甘く濃厚で、酸味とのバランスのとれた満足感のある味わいが口の中でずっと続きます。ゆっくりと楽しみたい至福のコーヒーでした。飲んでみたい方はこちらから。ちなみに、Santa Lucia農園は環境先進国であるコスタリカで有用微生物群(EM)によって土壌改良し、自然栽培を行っている農家さんだそうです。このEMは、フジロックなどの野外フェスやお祭りなどのトイレで活用されているそうですよ(地球トイレ)。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandart Communityでは、第24号のサンプルコーヒーを提供してくれたMOUNTAIN MOVERさんからのスペシャルオファーをシェアしました🙌
定期購読者限定で特別割引をご用意いただいたので、中国雲南省のコーヒーをもう一度試してみたい!ニュークロップも飲んでみたい!という方は、ぜひMOUNTAIN MOVERさんのオンラインショップをのぞいてみてくださいね。Standart定期購読者限定のクーポンコードはこちらから💁
なんと、グリーンコーヒーも買えるそうなので、ホームロースターの方も必見です!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『逃げた女』
映画作家ホン・サンスと俳優キム・ミニの7度目のタッグとなる作品『逃げた女』。5年間の結婚生活で一度も離れたことのなかったパートナーの出張中、初めて1人の時間を過ごすことになった主人公ガミ(キム・ミニ)は、3人の旧友のもとを訪ね再会します。友人のもとへ足を運び、食事と会話を楽しみ、時が来ればその場を去る。そんな時間の繰り返しの中で、徐々に浮き彫りになるガミの心の変化を軽やかなテンポで描いていく本作。友人たちと過ごす時間も、ガミのセリフも、同じ構造が反復されているはずなのに、物語が進むにつれてあらゆる部位が少しずつ脱臼していく。不思議と心地良さすら覚えるこの小さな違和感は、つい大胆な転換を連想しがちな「変化」という言葉の本質を思わせます。また、会話に散らばる優しさや迷い、隠された本心の断片の一つ一つが、彼女たちのこれまでの人生を凝縮したような密度を帯び、その何気ない言葉のもつ危うさに思わず心が掴まれます。
2020年の本作、21年の『INTRODUCTION』、2022年の『小説家の映画』で、ホン・サンス監督は3年連続4度目のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しており、現在日本では『小説家の映画』が公開中。ホン・サンス監督にしか撮れないキム・ミニの姿がおさめられたこちら作品も最高でした。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
加藤 幹也
神奈川県川崎市高津区にある「みんながのみにきてくれるコーヒーやさん」の店主。 グラフィックデザイナー(KATOGRAPHIC)。 デザイン事務所移転をきっかけに新事務所の隣に小さなカフェを併設しました。 今ではスペシャリティコーヒーを中心に自家焙煎のコーヒーとビールを扱っています。 今年は念願のエスプレッソマシン「FAEMA e61」を導入しました。
5 questions
今気になっている問いは?
「狭い店内、それでもできることは何か」
時には小さなギャラリーとして使ってもらったり、ライブ、落語や漫才、ポップアップショップなど、 店内は本当にとても狭く無謀な考えのような気もしますが、なにかやりたい人の場所にすることはできるのか。 そのためのプロモーションツールが必要でしたらフライヤー、ショップカード、SNSバナーなどデザインでサポートすることも可能です。 店+コーヒー+デザインをうまくリンクさせていきたいと思っています。
お気に入りの場所は?
「ホームセンター」
店のものはDIYで制作したものが多く、とにかくよく通っています。 作りたいものの方向性がある程度決まったら店内をうろうろしながら考えをまとめていきます。 結局「あれ、違ったか」と何も買わず帰ることも。 朝早くからやっているロイヤルホームセンターかコーナンプロは本当にありがたいです。
譲れないこだわりは?
工具メーカー「DEWALT」
無骨な雰囲気と、実用性の高い作りが魅力的です。 誕生日プレゼントにはツールホルダーをリクエストしています。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
長くデザインの仕事に携わってきた中でお世話になった方々です。 美味しい自家焙煎コーヒーを飲んでいただき、ちょっと驚いてもらえれば最高です。
最近、何に感動した?
先日息子とちょっとした言い合いになり落ち込んでいたところ たまたまYOUTUBEに流れてきたFIREBALLさんの「wonderfull days」が心に刺さり泣きました。
Fancy a refill?
編集後記
読み終わった本がたまってきたので、記録も兼ねて最近読んだ本の一部を並べてみました。最近外に出るのが危険なほどの暑さが続いているので、水分補給を忘れず、日中は無理せず過ごしましょう〜。
・『話の終わり』 - リディア・デイヴィス著、岸本佐知子訳
・『ここに素敵なものがある』 - リチャード・ブローティガン著、中上哲夫訳
・『心がめあて』 - 鈴木晴香
・『アムステルダム』- イアン・マキューアン著、小山太一訳
・『あおい』 - 西加奈子
・『すべての、白いものたちの』 - ハン・ガン著、斎藤真理子訳
・『菜食主義者』 - ハン・ガン著、きむ・ふな訳
・『砂漠が街に入り込んだ日』 - グカ・ハン著、原正人訳
Takaya
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第24号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、Swiss Water、Faema x DKSH、Fellow x Kiguのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)