おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
今週はいよいよ明日に控えた次号のリリースの準備や発送準備を整えていました。印刷されたばかりのフレッシュな雑誌とちょっと面白がってもらえるインサートも倉庫に到着しています。これからGW中に発送手配を行い(みなさんの発送先や発送物をリストにまとめていく作業)、お休み明けにコーヒー豆が揃ったら全国発送を随時行って行きます。楽しみにしていてくださいね。
そして今日はイベントのご案内。昨年も福岡の博多で開催されたコーヒーイベント「PARK」の第二弾が5/12~14で開催されます。今回はコーヒー+アルコールも楽しめる日が追加されてPARK x WEEKENDとして3日間の開催です。前回同様、企画にStandartも関わらせてもらっていて、Standartに馴染みのある、そしてニュースレターなどでご一緒させてもらったコーヒーショップの皆さんが全国から福岡に集まってくださいます。もう間違いなく美味しいコーヒー屋さんばかり。私も三日間会場にいるので、お近くの方はぜひお会いできると嬉しいです!ご出店者情報はこちらから。
先日のニュースレター#139の冒頭でお話したビール醸造のお話も、実はこちらのイベント用に作ったビール。私はほぼ何もしていないんですが(苦笑)、マイクロロットビールで地元のアーティストさんとコラボしたラベルもめちゃ可愛く仕上がっているので、ビールお好きな方はこちらもお見逃しなく。
私自身もコーヒーショップの運営をしていることもありイベントなどに呼んでいただくことがあるのですが、保健所への申請や準備しないといけない荷物(&荷物&荷物)、そして現場へ向かう交通費や人材や手間、さらにイベント出店中の自店の営業など、店外での出店というのは本当に大変な労力がかかります。コロナもあけて全国で様々なイベントが開催されていますが、県内外からコーヒーショップの皆さんがイベントに来てくださるというのは、簡単でも当然のことでもなく、とても尊いことなのだなと心から思います。(もちろん他のジャンルのご出店者の方々も)
自身のお店のコーヒーをたくさんの方に飲んでもらいたい、イベントやコーヒーカルチャーを盛り上げたい、そしてご自身もそれを楽しみたいという想いで、皆さん自店を飛び出して、コーヒーを淹れてくれています。これからのいい季節、全国でもいろんなイベントが開催されるので、私もコーヒーラバーの一人としてそれに応えるべく、たくさん会話して、コーヒーを飲んで、目一杯楽しみたいと思います。皆さんもその様子をSNSなどを通じてシェアしてくださいね!
それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
傾聴すべき相手
昨今のコーヒー価格の上昇を見ても、気候変動によるコーヒー生産への影響が、より深刻さを増してきています。こうした現実に対して、新たな研究プロジェクトや企業のイニシアチブが生まれている一方、コーヒーメディア「プアオーバー」は、本来気候変動から受ける影響が最も大きいはずのコーヒー農家の声が、十分に取り上げられていないと指摘しています。先日の記事では、ボリビア、コスタリカ、エルサルバドル、ウガンダ、インド、ハワイ、グアテマラなど、世界各地のコーヒー生産者とのインタビューを通じ、気候変動がコーヒー農家の日々の仕事にどのような影響を与えているのか、またその現状を踏まえた上でコーヒー業界がとるべき支援について、生産者の視点から説かれています。
記事によると、気候変動による最も大きな影響の一つが、不規則な天候や降水パターン。過去約5年間にわたって、各国の生産地が不規則な雨季に見舞われた結果、収量の減少やコーヒーチェリーの成熟過程への影響といった被害が出ているとのこと。コーヒーチェリーは日光を浴びて熟度が増すため、雨季にズレがでると、収穫期間が長期化し最終的には生産コストの圧迫を引き起こすと述べられています。「コーヒー業界は、私たちコーヒー生産者の運命が天候のなすがままであることを理解する必要がある」という言葉からも、不確実性が増した今日のコーヒー生産において、「以前と同じコーヒー」を作ることが日に日に難しくなっている現状は明らかです。気温上昇によるコーヒー生産地の縮小や、次世代のコーヒー生産を担う後継者不足といった問題を踏まえても、農家がより環境・経済的にサステナブルにコーヒー生産を行えるよう、土台を作り直す投資がより重要になっているのです。
併せて記事では、コーヒー生産者の多くがインターネットにアクセスできず、母国語が非英語であるため、掲載されたインタビューはあくまで一部の限られた声であることに言及しています。しかし今回の記事のように、コーヒー業界が生産者の声に耳を傾けることで、本当の意味でのサステナブルな業界を築いていくことができるのではないでしょうか。
気になるニュース
▷ 2024年に韓国・釜山で、世界最大級のコーヒー見本市「ワールドオブコーヒー」が、アジア圏で初めて開催されます。これに伴い2024年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップも、釜山の同イベント内で開催されます。
▷ 米・南カリフォルニア州のマクドナルド一部店舗で、水出しコーヒーの試験提供が開始。マクドナルドCEOは一月の決算報告で、チキンとコーヒーは同社にとっての大きな成長の機会であると言及しています。
▷ 台湾の蔡英文総統が、同国開催のグアテマラコーヒーイベントに、グアテマラ大統領と共に出席。先日ホンジュラスが台湾との国交を断絶し、中国との国交樹立を宣言したことを受けて、関係強化を図ったと見られています。
▷ 新しいポータブルスピーカー……と思いきや、中身はなんとポータブルなカプセル式コーヒーマシン。軽量・コンパクトで、外出時の持ち運びも楽々。USB Type-C対応のため、手持ちのラップトップから充電できるのも嬉しい。
▷ 人々の味覚の差には、実は口内バクテリアが関係していた?バクテリアと知覚の関係性についての研究によると、口内バクテリアの活動によって特定の味わいの知覚が妨げられる、または知覚レベルが変化する可能性があるのだそう。未来のカッピングプロトコルには、カッピング前の歯磨きの手順が加わるかも……?
物足りないあなたへ
英国が国際コーヒー協定(ICA)に加盟。チェンバレンコーヒーが缶コーヒーを発売。米・コーヒーチャンピオンシップ2023の各大会の優勝者が決定しました。
コーヒーイベント
▷ 東京:珈琲参道2023が開催!(5/5&6)小田急線狛江駅徒歩1分のお寺で開催するコーヒーイベント。
▷ 東京:COFFEE COLLECTIONが開催!(5/3&4)Standartも毎回出させてもらっていたイベントが帰ってきます。(今回は予定が合わず泣)
▷ 石川:金澤コーヒーフェス2023が開催!(5/27&28)インスタグラムでのイベントや店舗紹介がとってもわかりやすく、みてるだけでワクワクします。
▷ 福岡:PARK x Weekend が開催!(5/12~14)Standartも企画に関わらせてもらっています。イベントのメインビジュアルはken kagamiさん
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
NAKAYAMA COFFEE ROASTERY 京都(地図)
京都・木津川にある中山珈琲焙煎所です。2009年10月、移動販売とオンラインショップをメインにスタート。2010年12月、中山珈琲焙煎所(実店舗)をオープン。フレッシュなコーヒーが日常にあれば、ささやかだけど確実な幸せだと思い、営んでます。
生産者:ファンパブロ・ファージャ
農園:ラ・タシータ農園
生産地域:ベグアテマラ サカテペケス県アンティグア(地図)
品種:ブルボン、ティピカ、カトゥーラ
精製方法:ウォッシュト
テイスティングノート:アンティグアの名門農園ラタシータは、精製設備も完備しており、全てにおいて大規模できれいな、徹底管理されたスーパー農園という印象でした。ココアや赤ワインのようなニュアンスがあり、伝統的な農園らしい気品のある味わいを目指してローストしてます。
編集長のコメント:
横長のパッケージは案外珍しいなと思いながら封を切ると、袋内に凝縮されていた空気が押し出されるように飛び出してきて、パンがしっかりと焼けたような甘くて重たい香りがムワリと立ち上ります。豆を挽くとさらに香りがたち、カップに移して鼻を近づけると、密度の高い空気の中に、うっすらと藁の焼けたようなどことなく懐かしい香りを感じました。小学校の頃によく遊んでいた稲刈り後の田んぼでよく見た夕暮れが脳裏によぎります。準備ができて一口啜ると、ややスモーキーなパンチ。そして甘さや果実感が押し寄せ、鼻から抜けていく香りと共に口の中に心地よいビターさがじわじわと広がります。ヌガーのようで、ナッツやドライフルーツのような味わいがあります。ビターと書くと、一見ネガティブに聞こえることがありますが、味わいにバランスがあることでビターなフレーバーとの組み合わせは、より複雑な味のレイヤーを作ってくれて深みを増します。焼きなすっぽいなと思ったのですが、焼きなすはあのかすかにスモーキーでビターな味わいがあるからこそ、至極のうまさに変わると思っているのですが、まさにそんなコーヒー。温度が下がってくると、樽熟成されたどっしり系のジンファンデルを思わせてくれる芳醇さ、ハーブやスパイスのようなニュアンスも楽しめました。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandart Communityでは、コミュニティメンバーから自主企画「咀嚼する読書会」の開催がアナウンスされました。この読書会は、テーマとなる本の感想や疑問点について、参加者が意見を交わしながら、新たな視点から本を「咀嚼する」、そんなコンセプトのもと企画されました。記念すべき初回の課題図書は、伊藤亜紗著『体はゆく -できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』。本を読んだ方も、読まれていない方も気軽に参加していただけるので、気になる方はぜひ奮ってご参加ください!とても楽しみです!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『ムラブリ - 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと』
言語学者である伊藤雄馬さんが、タイやラオスの山岳地帯に暮らす少数民族「ムラブリ」とともにフィールドワークを重ねる中での体験を描いた言語学ノンフィクション。音声言語(文字を持たない言語)であるムラブリ語を習得していく中で、伊藤さん自身がムラブリの人々の思考や身体感覚に触れ、日本で過ごす中で当たり前として培われてきた、幸福、自由といった「常識」が剥がれ落ちていく体験そのものも研究対象としながら、読み手の「当然」を揺さぶっていきます。
特に印象的だったのが、ムラブリの人々の感情表現において、「心が上がる」は哀しみや怒りを表し、逆にうれしい/幸せな気持ちを表すときには「心が下がる」と表現する点。日本語や英語圏の文化だと、無意識に「心が上がる」ことは、幸福のメタファーとして受け取ってしまわれがちですが、ここにはムラブリにとっての幸福感が関係していると言います。なんでも歴史的に他の民族との争いを避けてきたムラブリたちにとって、感情を伝えるという行為は一大事であるのだそう。そのため感情が高まることは、ムラブリの間では避けるべき行為として捉えられ、反対に森の中で顔に触れる風を感じているような、心の凪のような状態、つまり「心が下がる」ことを良しとしているのだそうです。伊藤さんは、この「脱力した心地良さ」こそが、ムラブリにとっての幸福の感情に近いのではないかと述べています。
ふと考えてみると、「好きなことに没頭するべきだ」という強迫観念にも近い昨今の社会の圧力は、「心が踊り続けた状態であるべきだ」というドーピング的な色合いとも見ることができます。繰り返される日々の中でこそ、コーヒーを一口飲んだ後にこぼれる吐息のような、あの脱力感の中に込められれた幸福感を、改めて大切にしていきたいなと考えさせられました。大きく息を吸っても、どこか圧迫感を感じるようなときに、フッと心をゆるめてくれるような一冊になるはず。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
竹中 瞳
現在バリスタとして働きながら、個人ロースターungimの名前で焙煎、出店活動中です。ungim(ウンギム)は韓国語で人の集まるあたたかい気運という意味で、コーヒーを通じてそういう場をつくっていきたい、という私の考えにぴったりな言葉を韓国語の先生に教えてもらいました。
5 questions
今気になっている問いは?
「今自分の感じてることが全てなのか?」
コーヒーのティスティング、物事を見る角度、人間関係どれを取っても自分が感じたことを大切にしつつ、他の意見や見方がないか自分の成長のために意識しています。個性を感じることがとても楽しいです。
お気に入りの場所は?
「ソウル」
季節が変わる度に飛んでいた場所。本当にカフェが沢山あって、それぞれのコンセプトにインスパイアされつつ、リセットされる場所です。日本に比べるとコーヒーのバリエーションが多い部分もあって新鮮です。そしてやっぱりコーヒーで人と繋がった場所。
譲れないこだわりは?
「自分の機嫌は自分で取ること」
素材を楽しむ食材選びや季節の旬を感じたり、身体もストレスのないようにケアしたり、Feel goodを軸に置いています。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
コーヒーを飲むなら誰とでも飲みたいのが本音です。
間にコーヒーがあることで心許してる友達や初めましての方、普段話せないような方々と色んな話ができるので、コーヒーを飲むタイミングをより沢山つくりたいです。
最近、何に感動した?
不思議と相談を受けることが多い最近で、誰にでも話せるようなことではない事を話してくれた、友人達の勇気に心打たれました。彼ら彼女らの傍にいれて、私を思い出してくれたことも嬉しいです。
Fancy a refill?
編集後記
先日、世の中の当たり前に"違和感"を問いかけるマガジン『IWAKAN』の書簡集『未来の男性へ』にゲストとして寄稿する機会をいただきました。より自由で健全な男性性を考えながら、未来の男性に手紙を書くというお題の下、文章をしたためました。
「男性」「女性」とことさらに明言すると、二項対立の構造が立ち現れてきますが、その枠では捕捉されない人たちに思いを馳せ、構造自体に疑いの目を向け、内部から崩していく。そんな営みに繋がればいいなという思いを込めています。間もなくリリースされる次号のStandartと共に、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。
Atsushi
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。
Standart JapanのウェブサイトやInstagram、Facebookもぜひチェックしてみてくださいね。
今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、TYPICA、Probat x DKSH、MiiR、OATSIDEのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)