#12: 眠れる獅子、アジア

#12: 眠れる獅子、アジア

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

10月1日は「国際コーヒーの日」。普段は世界中の様々な場所でイベントが開催される特別な日です。2015年に生まれたこの記念日は、ミラノ万博にて国際コーヒー機関(International Coffee Organization: ICO)によって正式に制定されたそうです。よくよく思い出してみると、ちょうどその年のミラノ万博に行っており、図らずともその記念すべき場所にいたのだと嬉しくなりました。

このICOが国際コーヒーの日に向けて新しい取り組みを発表しました。コーヒー業界で働く若き次世代の起業家(農家からバリスタまで)を、資金面や技術面から支援するCoffee’s Next Generationです。

日本の農業界同様、現在コーヒー生産国では若い世代の農業離れが深刻化しており、世界中のコーヒー農家の平均年齢は56歳、アフリカでは60歳になると言われています。この状況を打破するためには、未来のイノベーションやサステイナビリティを支える若い世代に投資することが重要です。この取り組みから新しいアイデアや仕事が生まれることを期待したいですね。

同じくユースの話題で言うと、先週のニュースレターでもご紹介した、10代の起業家たちとコーヒーをテーマに語ったGAKUのポッドキャストの後編が公開されました。いまの若者がどんなことを考え、悩み、チャレンジしているかを知るいい機会になるかもしれませんよ。

そして最後に、Standart Japanのブログで最新号のスポンサーDaterra農園の記事「待ち続ける者のみが手にする成功」を公開しました。大きな企業になるほど社会的な貢献や責任を求められますが、コーヒー農家のためにDaterraが貢献できることに真摯に取り組む姿が感じ取れるはずです。

Toshi & Atsushi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

SCAの2018-2019年期アニュアルレポート

スペシャルティコーヒー協会(SCA)が2018-2019年期のアニュアルレポートを公開しました。今回のレポートはSCAのほか、各種協議会の運営を行うWorld Coffee Events(WCE)等の関連団体の情報も反映された、同団体初となる連結レポート。活動報告にはStandartの記事でも触れた生豆の価格危機対策イニシアティブPrice Crisis Responseや、新設された研究機関Coffee Science Foundationに関する情報も掲載されています。

資料全体を通して強調されていた点として挙げられるのが、SCAの経済的持続可能性と組織の一体感の向上でした。前者に関しては、SCAアメリカとSCAヨーロッパの合併移行初めて総資産が総負債を上回ったと書かれています。今回のレポートには新型コロナウイルスの影響は反映されていませんが、長い戦いが予想される中、状況改善に向けて財務の健全性も重要なポイントです。

後者については韓国支部の設立や台湾でのセンサリーフォーラム開催といったアジアでの活動の進展に加え、WCEと各国の競技会運営組織との関係強化、対象期間中に23か国で開催された61ものイベントの情報など、活動範囲の広がりが感じられました。

 

アジアのコーヒーイノベーション

COVID-19の影響で日本のインスタントコーヒー消費量が増え、ベトナムからのロブスタ生豆輸入量が増加中。このトレンドが継続すればベトナムがブラジルを抜いて日本のコーヒー輸入先No.1になるかもしれないとNikkei Asian Reviewが報じています。このニュースのようにアジアで生産されるコーヒーといえば、ロブスタ(カネフォラ)種が話題にあがることが多いですが、近年そのイメージが変わりつつあります。

例えばインドネシアでは収穫後の精製プロセスを改善することで複雑なフレーバーを生み出す努力が続けられています。というのも、同国は気候的にはコーヒー栽培に適していながらも、農地の標高の低さから高値で取引される一部の品種を栽培しづらいという悩みをかかえているのです。この記事では、カーボニックマセレーションや農園の土壌にいる微生物を勘案した発酵方法、動物の消化系から採取された乳酸菌を使った発酵方法など、イノベーティブな取り組みが紹介されています。

またCoffee Quality Instituteとアメリカの農務省(USDA)が共同で開催したバーチャルカッピングではラオス産のコーヒーがお披露目されました。もともとは今年のSpecialty Coffee Expo内でカッピングイベントが開催される予定でしたが、パンデミックの影響で展示会自体が中止になったことから、急遽リソースをバーチャルイベントに転用。50人を超える参加者のほとんどが初めてのラオス産コーヒーを遠隔で楽しむことになりました。あるロースターはYouTube上でカッピングの様子を公開しています。生産から流通工程まで今後さらに新しい取り組みが出てきそうです。

 

その他の気になるニュース

▷ 10月1日の「国際コーヒーの日」に合わせて、UCCが“コーヒーの偏愛家”たちによるオールナイトイベントを9月30日(水)22:00〜翌3:00に開催します。豪華メンバーが参加するこのイベントには、誰でもオンライン(かつ無料)で視聴できます

▷ 1960年代から活躍するギタリストのカルロス・サンタナがコーヒー事業をローンチ。売上の一部はサンタナ一家が運営する慈善基金の活動に使われるとのこと。


▷ スウェーデンのコーヒー企業グループLöfbergsは、2030年までにコーヒーの栽培・精製・消費工程で出るゴミを完全になくすことを目標に、Circular Coffee Community initiativeを立ち上げました

▷ 「コーヒー農家になるということは不安定な人生を歩むということ」——グアテマラ・ウエウエテナンゴのコーヒー農家へのインタビュー。コーヒーの市場価格、気候変動、人手不足など、グアテマラの一農家が直面する問題やその生活について知ることができます。

▷ Nestlé マレーシアは、2023年までに300万本の木をサバ州や半島マレーシアに植えることを発表。RELeafプロジェクトと呼ばれるこの取り組みは、生物多様性や環境の保全を目的とした、2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロにすることを誓約する同社のイニシアチブのひとつ。

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

Brass Coffee Bases
東京

コーヒーの面白さである多様性や新しい視点を発信していくコンセプトのもと、流通量が少なく、コーヒー屋さんでもほとんど取り扱われないアジア産のコーヒーに注目。こだわりがあり、高品質なのにスポットが当たらない、その美味しさにまだ気付かれていないマイクロロットコーヒーやスペシャルティコーヒーをセレクトする。40カ国以上を旅してきた店主の古賀 公さんは、旅の中でコーヒーの多様性にふれ、その面白さと”アジア産のコーヒーは品質が悪く美味しくない”というイメージを変えたいと奮闘している。

生産者:
ドイパンコン地域の小農家

生産国:
タイ チエンラーイ県 ドイパンコン村 (地図

品種:
Chiang mai(SL28・カトゥーラ・カティモールを交配したローカル品種)

精製方法:
ブラックハニー

テイスティングノート:
ブラックベリー、ワイン、さとうきび

編集長のコメント:
数年ぶりに飲むタイのコーヒーは、びっくりするほど美味しく魅力的でした。ミディアムローストの豆からは、チョコやラムレーズンの香りがあり、淹れたてのコーヒーは焼き立てのチョコチップクッキーのような香ばしさ。香りからすでにじわじわと口の中に甘さを感じていましたが、実際はそれを上回り、まさにイチヂク羊羹にかじりついているような感覚。ぜひ他のアジア諸国のコーヒーも試してみたい。


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

 

コーヒーについてぼくと詩が語ること - 小山伸二
購入インタビュー

編集者、出版社の書肆梓代表、食文化の教育や日本コーヒー文化学会常任理事など、多方面で活躍されている小山伸二さん。詩人としてもご活躍されていて、詩をテーマとした著書もいくつか出版されています。同書は、小山さんや様々な時代に生きた詩人たちの詩や言葉を通じて、コーヒーの世界を歴史、文化、宗教の角度から読み解くことができます。コーヒー&ミニシアター系映画が大好きな人は一度は観ておきたい映画「Oh Boy」(邦題: コーヒーをめぐる冒険)の登場人物の一人となった小山さんが、同映画の主人公ニコに向かって、コーヒーの歴史的背景や世界のカフェカルチャーに関して語る場面は、映画の中でどうしてもコーヒーにありつけずに困っていたニコにとってかなり拷問だったはず。この本の中で出てきた「ローカルに行動し、グローバルに思考すること」という言葉は、この広いコーヒーの世界を捉えようとする時の指針になりそうだと太く線をひきました。ちなみに、小山さんの詩は、Standart Japan第二号のフォトエッセーに中目黒のONIBUS COFFEEの写真と共に掲載していますよ。— Toshi 



NJP #1: Shōwa Tokyo 
ウェブサイト

日本に住む外国人編集者とデザイナーからなる3人のグループが2007年に創刊したウェブメディア「neojaponisme」。政治経済や歴史、芸術、サブカルなどさまざまな側面から日本を語るこの批評メディアが、創刊10周年を記念して制作したのが紙雑誌のNJPです。クラウドファンディングキャンペーンの成功を経て生まれた「昭和」がテーマの創刊号には、昭和を象徴するアイテム(トヨタのセンチュリーや喫茶店など)に関するエッセイの他、今でも昭和が感じられるお店・スポットを紹介する記事などが載っています。なかには印象的なプロパガンダイラストがプリントされた着物や、学生運動に参加していた団体のヘルメットデザイン集など「誰がターゲットなんだ?」と疑問になるマニアックな内容も。ウェブサイト同様、白・黒・赤で統一されたデザインからもどこかレトロな雰囲気が漂います。国籍や年齢を問わずおすすめしたい一冊。— Atsushi


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

比嘉 亜里沙 aka ヒガちゃん

PostCoffeeのロースター兼バリスタ。エチオピアのコーヒーが大好き。最近は、スペシャルティコーヒーのように、果実のフレーバーを感じたり、作り手による味の違いを感じるクラフトビールにハマっている。

セットアップ:
抽出器具:ハリオV60
豆量:15g
湯量:230g
挽き目:中粗挽き (KalitaナイスカットGの3番)
湯温:93℃
抽出時間:1:30 〜 2:00


手順:

  1. 30gのお湯を注ぎ、40秒蒸らす
  2. 50gを注ぐ
  3. 1分までに50gを注ぐ
  4. 1分30秒までに100gを注いで、落ちきったら出来上がり

        ポイント:
        ドリップ前にペーパーはリンスします。コーヒーの成分をしっかり抽出するために、蒸らし時間は長めに、しっかりとります。

        一言:
        スペシャルティコーヒーの魅力、美味しさを伝えるために奮闘中です! 「おうちでコーヒーを楽しむ!カルチャー」をもっともっと浸透させたいなと思っています。 “Coffee makes people smile”の言葉のように、コーヒーを通してたくさんの笑顔を増やしていけると嬉しいです。


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        今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第13号スポンサーの Daterra、パートナーのトーエイ工業Swiss WaterDepartment of Brewlogy のサポートでお届けしました。

        LOVE & COFFEE✌️
        Standart Japan