#118: ツアー、非常食、コーヒー

#118: ツアー、非常食、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか? 

いよいよ最新号のStandart Japanを皆さんの元へお届けできています。SNSを通じて、「ハロー! 届いたよー!」「楽しみにしていた」と言った声を聞くことができ、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。

毎号お伝えしている気がしますが、皆さんに最新号をお届けするこの瞬間や読者の方々からの反応が、Standartメンバー全員にとってかけがえのない喜びと励みになっています! Standartを楽しんでくれて、皆さん本当にありがとうございます。いくつかの記事を読み終えたら、ご感想など聞かせてくださいね。

最新号の付録のサンプルコーヒーを飲んだ方もすでにいらっしゃると思いますが、インド産のコーヒー自体を飲んだことがない、はたまた久しぶりな方も多いのではないでしょうか。アジアのコーヒーのクオリティがどんどん上がってきているのを感じることができ、きっと驚いてもらえるはず! 美味しいですよ〜! ストロベリーやチョコレートのフレーバーが口の中でドカンと広がる、とても綺麗なナチュラルプロセスのコーヒーです。Standartジャーナルにはブルートーカイがお勧めする抽出レシピを掲載しているので、どうやって淹れようかなと考えている方は参考にしてみてください。このコーヒーの生産者と焙煎を担当したロースターよりメッセージも届いていますよ

最新号では生産地タイのストーリーを掲載しています。皆さんの地域にあるコーヒーショップでもインドや他のアジア地域で生産されたコーヒーを取り扱っているお店があると思うので、見かけた時はぜひどんどんトライしてみてくださいね。

最後に、ブルートーカイが11月27日まで東京駅構内B1 グランスタ東京にて期間限定のポップアップストアを開催しているので、もっといろんなインドのコーヒーを飲んでみたいという方はぜひ。

来週は少しゆっくりしてから、年末にかけての計画を立てたり、次の号の制作を進めて行きたいと思います。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

  

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

ビーンレスの中身

昨今ベンチャーキャピタルの投資先として、注目を集める「ビーンレスコーヒー (コーヒー豆を使用しないコーヒー)」。代表格であるアトモコーヒーを筆頭に、数年前から新規参入企業や資金調達のニュースを目にすることが増えました。この現状に対して、コーヒーニュースレター『Pourover』が、ビーンレスコーヒー企業マイナスコーヒーの事例から、「ビーンレスコーヒーは誰のためにあるのか?」という問いを投げかけています。

マイナスコーヒーはコーヒー生産が気候変動を悪化させると同時に、気候変動によって悪影響をうける生産活動であることを前提に、地球環境とコーヒー農家の生活を守ることを企業理念として掲げています。この「コーヒー生産が環境破壊を進める」というスタンスは、アトモスコーヒーをはじめ多くのビーンレスコーヒービジネスに共通する認識と言えます。しかしこの認識が完全に間違いでないとはいえ、実際に森林破壊に直結しているコーヒービジネスの大部分は、大規模生産を前提とするコモディティコーヒーであり、実際には環境に配慮した生産形態を採る多くの小規模農家の存在があること。またコーヒー生産の大半は小規模農家が担っており、その多くが貧困問題に直面しているという視点が欠けているのではないか、とニュースレターでは指摘されています。小規模農家の生活を脅かしかねないビーンレスコーヒーという”解決策”は、本当に前述のような問題に有効なのか? 加えて、筆者がマイナスコーヒーへインタビューを行ったところ、コーヒー農家を支援する方法・内容が不明瞭だったと指摘されています。

企業の掲げるビジネスの社会的意義が、単なるマーケティング要素の一つとしてではなく、業界の実情を反映しているのか。その真偽を完全に見極めるのは非常に困難ですが、消費者は日々の選択を通じた、能動的な消費行動が必要とされているのではないでしょうか。

 

気になるニュース

▷  業界団体UKHospitalityの最新の調査で、事業者の約35%が赤字、もしくは経営危機に追い込まれていると回答しました。光熱費の高騰、インフレによる材料費の増加、またそれらに起因する外食意欲の低下などが原因として挙げられています。

▷ ブラジルで新大統領当選後、旧大統領の支持者らによる大規模な道路封鎖のプロテストが同国全土で発生。現在は縮小傾向にあるようですが、コーヒーをはじめとする商品作物・農薬などの輸送に影響が出ています。

▷ 韓国とニューヨークを拠点とするコーヒー器具スタートアップ「レインメーカー」が、3層式のシリンダー型ドリッパーを発表。ペーパー不要のステンレス製スチールフィルターを採用しており、シャワーヘッドのようなドリッパー底部が特徴的。気になる方は、Kichstarterのページもチェック。

▷ ロックバンド「Death Cab For Cutie」とワシントン州のカンバー・コーヒーが、新アルバムを記念するコラボ商品を発表。ちなみに同バンドのヴォーカルであるベン・ギバードは、ツアーにエアロプレスとケトルを持っていくことで有名なのだとか

▷ 韓国南東部の鉱山に閉じ込められた2名の作業員が、先日約9日ぶりに救出されました。2人は天井から落ちてくる水と、作業場所にあったインスタントコーヒーを食料代わりに飢えをしのいだそうです。回復後は、温かいコーヒーで身体を休めてほしい。

物足りないあなたへ

オランダの乳製品企業と東南アジア諸国連合(ASEAN)コーヒー連盟が、10年間のパートナーシップを締結バリスタ向けトレーニングの共同開発などに取り組みます。コーヒー生豆商社「Olam」が、リブランディングを経て「Covoya」へと社名変更。ワールド・コーヒー・チャンピオンシップ (WCC) ファイナリストへのインタビューシリーズ「World Coffee Championship Allstar Online」のシーズン6の配信が開始されました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

JUNCTION Coffee Roaster 熊本地図

2020年8月に開業、焙煎業とイベント出店等の活動を経て、2021年12月に熊本市内に店舗をオープンしました。コーヒーを手に様々な想いが交差する場・コーヒーが人を繋ぐ場】をコンセプトに、行き交う人が気軽に入りやすいように、大開口の入り口を特徴としたコーヒーショップです。

 

生産者 カルロス アンドレス ゴメス

生産地域コロンビア ウィラ県サン アグスティン(地図

品種ピンクブルボン

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
ダージリンティー、オレンジ、ネクター、コンプレックス、ロングスイートアフター

編集長のコメント:

先週に引き続きコロンビアのコーヒーでした。同じウィラ県ですが地域が異なる産地のもの。グラインダーに放り込んだ豆がガリガリという音を鳴らす間から早速香ってきたのは出汁っぽさやポテトチップスみたいな香りで、これはいくらでも嗅いでいれそうです。お湯を注ぐと、採れたての果実のようなみずみずしくほのかな甘さを彷彿とさせてくれる芳香が立ち上ります。とても好みの香りです。スプーンですくったコーヒーを口に入れると、良質なブラックティーのような花や果実感を思わせるフレーバーが飛び込んできます。口の中がお茶っぽさに満たされると、フルーツ感が全面的に感じられるようになってきました。赤い実の果実が頭に浮かんだかと思うと、そのフレーバーを記憶と結びつけるように、ゆっくりとプラムやネクタリンが連想されます。ジューシーで鮮やかな酸味と果実の甘さがとてもちょうどいいですそして飴玉のようなじんわりとでも凝縮された甘さが放射状に広がっていくよう。後味はジンのようなハーブ感も感じました。あぁ、美味しい! すすーと喉を伝って体に入っていくこのコーヒー、たまりません。ごちそうさまでした。


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、Usagiさんがプレイリストを共有してくれました。以前オススメのアーティストについての会話がコミュニティ内で行われ、プレイリストにはそこで話題に上がったアーティストの姿も。アップテンポなメロディと共に、Let’s Dance!!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

「The Secret Life of Leftovers 」

米シンクタンクEthics and Public Policy Centerが発行する機関誌『The New Atlantis』の食品廃棄物に関する記事。著者のナット・ワトキンスは、まずFood Waste(食品廃棄物)という言葉の妥当性に疑問を投げかけます。 「Food」と「Waste」はそもそも相互排他的でWaste(廃棄物)とは何かしらの問題があるか、使えないものを指すはず。しかしスーパーで棚に並ぶ食品の3割(米国のデータ)がまだ食べられる状態なのに廃棄されている——この現状を変えるべく筆者が勧めるのは食品を触り、匂い、少量口にしてみるなど、自らの感覚を駆使して食品の安全性を判断する力を養うこと。 「目に見えない危険性が潜んでいる可能性があるという警告には妥当性があるものの、だからといって少しでもその疑いがあるものをすべて『食品廃棄物』とみなす過度な単純化が進めば、消費者は見境がなくなり、怠惰になってしまう。大量生産の現場のように、私たちは倫理性よりも効率性を重視する誘惑に常に晒されている」と喝破します。 さらに彼女は、塩漬けや発酵食品、余り物で作るカレー、キャセロールなど、現代ほど食品の保存技術が発達していなかった時代に先人が築いた知恵を紹介しつつ、次の世代に私たちが残せるものは何かと問いかけます。「チーズ、カレー、ビール:端材を創造的に活用した先人のありがたい教え。かたや私たちは、次世代にゴミを残そうとしている」という副題が現実のものとならないように。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

滑川 京子 なめかわ きょうこ

1987年埼玉県出身。大学病院で6年間の勤務を経て、コーヒー業界に転職。コーヒーは大学病院での勤務時代に眠気覚ましとして、缶コーヒーを飲むようになったことがきっかけ。産後9ヶ月の頃に出場したJHDC2018で準優勝、翌年から家具屋に併設された WOODWORK Welcome COFFEE にて勤務。現在はSCAJのブリュワーズ委員会委員としても活動中。下町の温かい常連さんや理解あるスタッフ、旦那さんのサポート、懇意にしてくださるメーカーさん、保育園のお陰で、子どもに右往左往されながらも働けています。

5 questions

今気になっている問いは?

「子どもが小学生になってからの働き方」
再来年には小学校進級を控えており、働き方を見直す時期に来ています。保育園よりも学童保育の方が預かり時間が大幅に短くなるのは、かなりの死活問題…。子どもの成長が嬉しい反面、再来年どのような働き方にシフトしていくか悩ましい時期に突入しています。会社と相談しながら、子どもにとっても自分にとっても最善の道を見つけられたらと模索中です。

 

お気に入りの場所は?

「お家のベランダ!」
部屋は狭いのに、ベランダだけ広々! べランピングしたり、大好きな植物を植えたり、娘が自転車の練習をするのを椅子を出して眺めたり。娘と2人の晴れた休日は、だいたいベランダにいます。

 

譲れないこだわりは?

 「旦那さんとの2人の時間を作ること」
子どもが寝た後に2人でゆっくりしたり、最近の悩みやその日にあったことを共有する何気ない時間があるからこそ、自分をリセットできています。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

コーヒー業界に転職して最初にアルバイトをした常盤珈琲焙煎所の浦和店の初期メンバー! 畠山さん、清原君、俊平さん、ゆうさん、金子さん、社長、マネージャーと一緒に今自分が1番美味しいと思うコーヒーと抽出方法を持ち寄って飲み比べたいです。

あなたのとっておきの料理レシピは?

「スコーン」
スコーンきっかけで出会ったお客さまや、そこから広がったお仕事の方々も、今の私を支えてくれる大切な存在です。そんな人たちに出会わせてくれたスコーンのレシピと試作調整を重ねた期間はコーヒーと同じくらいかけがえがないです。

 

Fancy a refill?
編集後記 

メディア不信―何が問われているのか』を読了。2016年米国大統領選挙におけるソーシャルメディア分析、大手メディア媒体が生み出すエリート主義構造、分断の世における「メディアの中立性」への問いかけなど、非常に示唆に富んだ内容でした。この本を執筆した林香里氏の別の著書『〈オンナ・コドモ〉のジャーナリズム―ケアの倫理とともに』を先日発見し、こちらも早速購入。今改めて、社会におけるメディアの役割、そしてメディアが届ける"声"について考え直していきたいです。

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)