「コーヒーは生もの」なんてフレーズを耳にすることがありますが、コーヒーは焙煎直後のもの(=新鮮なもの)ほどおいしいとも言い切れません。Standart Japan第15号のパートナー、トーエイ工業とVictoria Arduinoがコーヒーの新鮮さや「プレウェッティング」について教えてくれました。
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コーヒーが持つアロマを余すことなく楽しむためには、焙煎豆を「新しい」状態で保たなければいけませんが、焙煎してから時間が経っていないほど良いというものでもありません。むしろフレッシュ過ぎるコーヒー豆というのは、バリスタにとってはある種の課題になりえます。
コーヒー豆の中で何が起きているかを理解するため、まずは前提となる知識について簡単にご説明します。すべての食品は時間が経つと、気温や湿度といった環境的な要因によって遅かれ早かれその性質が変化します。一方、もともとは果実の中に含まれる種であるコーヒー豆は、飲み物になる過程でさまざまな処理(焙煎、粉砕、抽出)を経て、その姿を大きく変えます。そして最高の一杯をお客様に届けるためには、その過程の中でコーヒーに含まれる官能特性を可能な限り保持しなければなりません。そこで鍵となるのがコーヒー豆の物理的、化学的な変化です。
焙煎豆はいつ袋詰めすればいいのか?
コーヒーは「古く」てはいけません。というのも、時間の経過とともに焙煎豆はアロマを失い、酸化が進むにつれて悪臭のする油分や有害物質を放出するようになります。しかしフレッシュ過ぎてもいけません。焙煎直後のコーヒーを袋詰めした場合、その豆を使って抽出したエスプレッソの上には、あのクリーミーな層とは似つかわしくないフォームが作られてしまうのです。肝心のコーヒーは本来の繊細さを失い、鋭い風味を持つことになり、特に舌に刺激が残ります。
これらは焙煎直後や焙煎からあまり時間が経っていないコーヒー豆に自然と現れる、望ましくない特徴です。焙煎による化学反応の結果、コーヒー豆の分子構造が変化し多量の二酸化炭素が生み出されると、コーヒーの成分自体は変わらずとも知覚に影響を及ぼすのです。また二酸化炭素の影響でエスプレッソの表面に浮かぶクレマも泡だってしまいます。だからこそ焙煎を終えたコーヒー豆には「ガス抜き」の期間が必要なのです。
コーヒーの新鮮さに関する研究
通常バリスタはコーヒーの焙煎日やそれが袋詰めされた日を知っているもの。というのも、これらの情報と経験、専門性を頼りにバリスタはどれだけの期間がガス抜きに要されるか判断できるからです。もしも抽出までの期間が空き、梱包された日から時間が経ちすぎると、コーヒーからは余計な二酸化炭素だけでなく、香気成分が出ていってしまいます。世界的に知られたコーヒー研究者のChahan Yeretzian教授は、この原則をある研究で証明しました。チューリッヒ応用科学大学(スイス)で行った実験のひとつで彼は、焙煎後1か月から1年経過した複数の豆を使って抽出したコーヒーの化学的組成を比較しました。
フィルターコーヒーとエスプレッソの間にも大きな違いがあります。フィルターコーヒーの場合はフレッシュな焙煎豆に含まれる余分な二酸化炭素が抽出中に抜け出す余地がありますが、エスプレッソだとそうはいきません。9気圧の力がかかった熱湯がコーヒーパックを通過すると、二酸化炭素がすべて抽出液に入りこむため、フォームをはじめとするネガティブな結果につながってしまいます。もしもエスプレッソにこのような特徴が見られる場合、使用したコーヒー豆が「フレッシュすぎ」て、ガス抜きが十分でないことを意味します。
余分な二酸化炭素を取り去るテクノロジー
時間の経過とともに二酸化炭素だけでなく、香気成分もコーヒー豆から抜け出してしまうというのは先述の通りです。しかし「プレウェッティング」機能を活用すれば、アロマを失うことなく余分な二酸化炭素を除去できます。
この革新的な機能を使えば、バリスタは外部環境や取り除きたい二酸化炭素の量に応じて、パックとお湯のコンタクト時間を調節できます。
焙煎を終えてから消費期限を迎えるまでのどこがベストな抽出タイミングか、というのは個々のコーヒーによって異なります。そして常にベストなタイミングでコーヒーを抽出できるとは限りません。しかしVictoria ArduinoのVA388 Black EagleやVA358 White Eagleに搭載されたプレウェッティング機能があれば、バリスタはその期間を広げつつ、官能特性を最大化できるのです。