毎年世界のどこかでStandartのメンバー全員が一堂に会するチームミーティング。チェコで行われた2018年のミーティングでも、Standartが提供する体験をより良くするため、大小さまざまな点について熱い議論を交わしていました。だた、そこで私はふと気づいたのです。今までStandartの価値観(「バリュー」とも呼ばれるもの)について、読者はおろかチームメンバーとさえきちんと話したことがないということに。もしかしたら、それまでその必要さえ感じていなかったのかもしれません。何しろ全員が同じ方向を向いているように感じていましたし、仕事への情熱も持っていて、常に自分たちの限界に挑戦しようとしていましたから。
正直さこそが問題解決への近道。
はっきりと言語化されていなくとも、価値観というのは自然と感じられるものではないでしょうか? 実際、私たちも確かに感じ取っていました。それでも改めて言葉にする必要性を感じたんです。なぜなら私たちの仕事のあり方やモチベーション、さらにはビジネス的な判断やクリエイティブな選択も、すべては私たちの価値観によって定められるからです。そこでこの場を借りて、Standartの3本柱とも言える価値観を記しておこうと思います。
正直さ
社内外を問わず、互いにオープンで正直にいれば解決できない問題はありません。もちろん正直にいるのが難しいこともあります。私がStandartを発送し忘れたら、自らの失敗を認め謝罪し、他のことを一旦中断して、できるだけ早くその問題を解決しなければいけません。でもきちんとそのステップを踏めば、周りの人たちは理解してくれます。そこには隠されたルールもなければ、過度に空気を読む必要さえありません。正直さこそが問題解決への近道であり、誰もそれに異論を唱えることはないのです。
共感
私たちがStandartを通してやっているのは種々の橋をかける作業です。サプライチェーンの各参加者を繋ぐ橋、コーヒーのプロと愛好家を繋ぐ橋、科学者とバリスタを繋ぐ橋など、その種類も距離も実にさまざま。そして私たちと読者の皆さんを繋ぐ橋もそれらと同じくらい大切です。私たちと皆さんの間にある橋は信頼という基礎の上に成り立っていて、これなしではStandartを続けることさえできません。そういう意味では、私たちもホスピタリティの世界にいるような気がします。分かりやすい言葉を選び、フレンドリーなコミュニケーションを心がけるだけで、誰かの気持ちを明るくできることがあるのです。アメリカの活動家・詩人のMaya Angelouがこう記したように。「人はあなたの言葉も、あなたの行動もいつか忘れてしまいます。でもあなたに対してどんな感情を抱いたかだけは決して忘れません」
高潔さ
高品質なコンテンツ、デザイン、コミュニケーションをバランス良く、一貫して届ける——これが私たちが毎号掲げる目標であり、私たちにとっての「スタンダード」です。これは各メンバーが誇れるような雑誌を作る、と言い換えることもできます。幸いなことに世界中が繋がり合った現代に生まれた私たちには、インスピレーションを得られるチャンスが無尽蔵と言えるほどあります。そんな状況に感謝しながら、Standartを愛し支えてくださる人たちと一緒に、やるべきことをやっていく。それが私たちにとっての正義です。
Michal Molcan
Standart 創刊編集長